第22話 時間を稼げ!


 周囲の木々が切り開けた場所で俺は迫りくる魔物を刀を抜いて待ち構える。

 するとガサガサと草木を退かしながら、何かを引き摺り、這いずって来るような音が聴こえてくる。


 そして、その白くてヘビのような形をした巨大な魔物が遂に現れた。


「『』ッ!?」


 キングサーペント、それはヘビの魔物の中でも最も強い強度と速度を持つまさしくヘビの王といえる魔物だ。


「【極光】よッ!!」


 俺は強烈な光魔法を放つ。ヘビは熱を探知することで有名だ。

 光は微弱ながらも熱を持つ。今回、俺はその『熱』を使ってキングサーペントの視界から外れる。


 キングサーペントの視界から外れるとキングサーペントは俺を探しているのか辺りをキョロキョロと見回している。

 残念ながら俺は木の上にいるので、そんな下ばかり見ているヤツに見つかるはずがない。


 どうした? その程度か? そんな下ばかり見てるってことはお前よく獲物に逃げられてるんじゃないのか?


 学習力低いなぁ……やれやれ……




「…………あっ」



 メガアッタ。



 チッ、仕方ないッ! ここからは本当に耐久戦だ! 誰だよあんなに余裕ぶちかまして煽ってたヤツはッ!


 ティナか! ティナが悪いのかっ!


『アンタでしょッ! ひとのせいにしないでくれる!?』


「きゃっ!?」


 余裕ぶちかましてたらキングサーペントに喰われそうになった。

 なんとかギリギリ回避したものの、我ながら随分可愛らしい声が出たものだと感激した。


『今更感激しないでくれるッ!? ほら次来るから早くしてッ!』


 ったく、いちいちうるさい刀だな。わかってるよ。


『誰がうるさい刀よッ! 自分で言うのもアレだけど私一応なのよッ!』


 ……浄化されたい?


『謝るからヤメテ』



 ようやくティナが静かになったので、俺は戦闘に集中して、走り出す。


 キングサーペントは硬くて速いが、尻尾を叩きつけること以外で遠距離攻撃をしてこない。周囲の木々を利用し、距離さえ保てれば耐久できるのだが――――――


「っ!?」


 距離を取って走っていたはずなのにキングサーペントが俺の目の前に立ち塞がった。後ろに逃げようとするが、既にキングサーペントの尻尾が俺の逃げ道をふさいでいた。

 あとついでに二体目のキングサーペントの頭が見えた。どうやらキングサーペントは二体もいたようだ。

 差し詰め夫婦と言ったところか?


『ちょっとどうするのよっ!? そんな余裕こいてて平気なのッ!?』

「うるさい」


 騒ぐティナに一言突きつけて俺は刀を構える。

 正面から俺に突撃してくるキングサーペントに立ち向かう形で俺は走り出した。

 そして、キングサーペントは口を大きく開け、俺を捕食しようとする。


『えっ!? ちょっ!?』

「【転移テレポート】!」


 キングサーペントに喰われる直前に俺は【転移】を使用してキングサーペントから逃げる。

 元々勢いがあったので、減速せずに走ることができる。二体のキングサーペントは互いに正面激突してしばらく動けない様子だ。これで一気に時間稼ぎができる。


『心臓止まりそうになるからやめてよ……』


 お前心臓無いだろ。何を言ってんだ。


 すると誰かが俺を呼ぶような声が聴こえたのだ。俺はその声がする方向を見ると名も知らぬ青年がこちらに走ってくるのが見えた。


「ティアーーッ!」


 走ってくる青年を見て俺とティナは安心し、軽く手を振った。


『助かったわね』

「うん……」


 こうして俺たちは助かった。







 かと思ったが――――――



 青年の後ろから白くて大きいニョロニョロと這いずるキングでサーペントな魔物がこちらに向かって来ていた。


「ティア助けてーーッ!」


「『………………』」



 死ねよチンパンジーが。




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