第21話 課外授業ですよ


 ティナと出会ってから2ヶ月が経過した。


 今日まで午前中の授業は全てティナとお喋りをして暇潰しをしていたのだが、今日はそういうわけにいかない。


 何故なら今日は瘴気が消えた『瘴気の森』に魔物が大量発生しているらしく、せっかくなので魔物狩りをやらせてみようという課外授業があるからだ。


 俺もティナを振り回したいと思ってたからちょうど良かった。


『既にアンタとの会話で振り回されてるわよ』


 エドワードに剣術を習おうとしたのだが、さすがは英雄という感じで「お前が剣になるんだよォ!」とか意味のわからない台詞を言ってきた。脳筋と名も知らぬ青年が考えてることは俺にはわからん。


『そろそろ名前聞けば?』


 なぜ? どうせあと10ヶ月ぐらいしか一緒に居ないんだぞ? アイツボッチだから仕方なく食事に誘ってやってるぐらいの存在だぞ。名前なんて聞く必要ないだろ。


『悲しすぎるっ! 名前も知らない人、どんまいっ!』



 少し話が逸れてしまったが、エドワードに剣術を教わることは出来なかった。

 そこで俺が次に目を付けたのはクレアだった。クレアは初めて会った日に王子と剣で戦っていたからだ。


 そして、その俺の判断は正しかったことを実感した。


「クレアさんっ!」


 前世から受け継いだ察知能力でクレアを魔物の奇襲から回避させ、刀を引き抜いて魔物を両断する。


「ティア様、良い反応するじゃねーか。お前らも見習えよ。魔物を感知することは生死をわけることもあるからな」

「「「はいっ!」」」



 それから魔物の出現と共に皆で協力して討伐。

 俺たちは奥へと進んで行ったのだが……


『ティア! 他のみんなはッ!?』

「えッ!?」


 俺は辺りを見回すと誰もおらず、俺は1人はぐれてしまった。


「【岩弾丸ストーンバレット】」


 巨大な魔物の気配がしたので、視線を逸らすために関係ない場所に魔法を打ち込み、木々を利用して森を脱け出すために走る。

 だが、巨大な魔物は俺の放った魔法には興味もくれずに追いかけてきた。


 このまま【転移】で逃げる方法もあるが、クレアたちが俺を探して森を彷徨っている可能性がある。

 アイツらが死ぬのは勝手だが、その原因が俺となっては申し訳無さすぎる。


 せめてコイツを殺すかクレアたちを先に見つけ出すかをしないと……!


 そうなれば必要なことは情報だ。まず巨大である程度速度があるから条件としてはかなり絞れる。

 オーガやマンティコア、地龍、フェンリルクラスの魔物だ。


 そこまでくるとこの森にいる人で倒せる人は――――――――



 その時、俺の頭の中で1人の青年の姿が思い浮かんだ。


 ――――いるじゃねーか。俺をティナの元まで連れて行ってくれた超強いヤツがっ!


「そうなればすることは1つ!」


 俺は風魔法で空高くに飛び、闇魔法で高密度な瘴気を作り出す。

 すると高密度の瘴気は紫色の霧を作り出した。アレを見たことがあるのは名も知らぬ青年だけ。確実に駆けつけてくれるだろう。


 だから俺は、ここで魔物を足止めするッ!


「さあ、来いよ! デカブツ!」







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