第19話 ふくしゅうにはふくしゅうで!
「どうしてこんなところに……」
俺は季節外れに咲くサクラの木を眺めて刀に注目して触れてみたり、光魔法を使ってみるも何も起こらず、刀を引っこ抜こうとしても魔法か何かで固定されてるようで、抜けなかった。
……なるほど、歴代の聖女たちも対処出来なかった訳だ。この刀もサクラの木も瘴気の根源ではなかったのだから。
「たしかここだったはず。ちょうど刀が視界に入るように……」
俺は夢で見た金髪の少女が死ぬ場所に合わせて同じポーズを取ってみる。
するとサクラの木が急激に枯れ、辺り1面が高密度の瘴気に包まれた。
俺は起き上がって辺りを見回していると誰も居ない場所であるはずなのに誰かの足音が聞こえてくる。
『許さ……な……い……あ……いつ……だけ……は……』
俺の正面に現れたのは夢で見た金髪の少女だった。今までは顔の形とかはハッキリ見えなかったので分からなかったが、この娘は間違えなく
二十七年前に殺害されたこの国の第一王女。ティナ・アストライム王女だ。
「あなたは……誰が怨めしいのですか?」
『おとう……さ……ま……』
ティナのその言葉を聞いた瞬間に俺は目を見開き、気がついたら彼女に自ら歩みよって彼女の手を握っていた。
「
『……えっ?』
ティナが呆けた声を出していたが、その声は俺には聴こえず、俺は彼女に聖女という建前を忘れてあの憎しみを伝える。
「あのクソ国王のヤツ以前からずっとウザいと思ってたんだ。国民の税金で生活してる分際で一日中ベッドの上でゴロゴロしながら指図ばっかりしてちょっと不機嫌になったら人を呼び出していきなり怒鳴る。他にもピーマンは食事に出すなだ。酒は瓶を出せだ。枝豆は三つ入ってないと許さないだ…………枝豆なんて別にどうでもいいだろっ!?
それなのにあの
『えっと……なんか、申し訳ないです……』
ティナは若干引いていた。
そして、自らの父親の繰り返した愚行を恥ずかしく感じていた。そんな彼女こそがこの国の王に相応しいのではないかと思ってしまった。
『どこの
ティナの横には一本の刀が刺さっていた。それは先ほど抜くことが出来なかった剣だ。
『この刀は【妖刀 ティルスティア】
その昔、幼き神が自らの力で作ったとされる刀です。噂によると、【時間】さえも斬ることが出来るらしいです』
ティナの説明を聞いた後、俺は地面に刺さった刀を引き抜くために柄の部分を持つ。
「ふんっ! ぬうぅ……っ!」
刀を引き抜くために俺は全力で力を入れる。俺は俺とティナを殺した
『きゃあッ!?』
「ーーっ!?」
刀が地面から抜ける。それと同時に俺の魔力が勝手に闇属性の魔法となって外に溢れ出した。
そして、その闇属性の魔法はティナを包み込んで刀の中へと収まった。
――――――――ガチャンッ!
何処かに鍵が掛かる音がした。
『えっと……どうして……?』
突然ティナから受け取った刀からティナの戸惑っている声が聞こえてきた。
「んんッ!?」
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