第16話 マッスル・リカバリー!
青年が医務室を出てから俺はクレアとフレイヤの三人で昼食を食べ、体操着に着替えて午後の授業に挑む。
「まずは各自準備運動をしてからグラウンド五十周! 冒険者には体力が必須だからな。無理なら諦めて退学してもいいんだぞ!」
教官の指示通り、俺とクレア、先ほどの青年と他何名かは準備運動をしているが、準備運動をせずに走り出したバカ共の方が遥かに多かった。
あとで筋肉痛になっても知らないぞ。明日も授業はあるんだからな。
「ティア様、大丈夫なんですか? 体力とか……」
「はいっ、出来るかわかりませんが、体力作りは大切なことですから」
「そうですか」
準備運動を終えた俺とクレアはグラウンドを走り始めた。
◇◇◇
「疲れた……っ!」
「そうですね……」
グラウンド五十周を走り終えたクレアは地面で横になるが、俺は人の目があるのでそんなこと出来ず、立ったままである。
座りたいッ! 休みたいッ! 寝たいッ!
「まさか走り切れるとはな……やるじゃねーかティア様ッ!」
「いえ、それほどでは……」
あるけどなっ! グラウンド五十周ってヤバくね!? 前世で通ってた初等科とか中等科なんてグラウンド三周が限界だったぞ!?
脳筋過ぎるだろ!? どうなってんだこの学園ッ!?
「おっ、ティア様立ってられるとは随分余裕そうだな」
やめてください教官。これ以上厳しくやられたら俺が死にます。
「ヤメロ教官! ティアのライフはもうゼロだッ!」
その言葉を放ったのは先ほどの【エルフの国】に住んでいたという青年だった。
まるで何かが決まったという感じの顔をしていたが、俺も教官も何を言ってるのかさっぱりわからず、ポカンとしていた。
「俺にタメ口とはいい度胸してるじゃねーか」
「え? あっ、その……すいませんでした」
「お前はもう五十周走って来いッ!」
「はっ、はいぃ……!」
名も知らぬ青年よ。汝に1つ、助言をしましょう。
――――余計なことを言うと身を滅ぼすから気をつけよ。
◇◇◇
それから五十周追加で走った青年は体力を使いきり、医務室へと運ばれた。
「【
これはエレノアも知らない体力の回復を促進させる魔法だ。命名者は俺。なんとなく気分で決めた。
オマケの効果として体力を少し上昇させ、翌日に酷い筋肉痛をもたらす。
まあ、バレなきゃ良いだろ。
「うっ、ううん…………知らない天井だ」
青年は目を覚ますと意味不明なことを呟いた。
さっきまでキミ、ここで俺と会話してただろ。なんで知らないんだよ。
「お目覚めですか?」
「ティアか……ここは?」
「医務室ですよ」
「そっか……迷惑かけたな」
「いいえ、大丈夫です」
愛想笑いで青年に聖女っぽい返事を返したが、実際は――――――
はあっ!? それだけかッ!? まだ九歳の幼気な少女にここまで運ばせておいてそれだけなのかッ!? もっと褒美を出せっ! 今回は特別に国王を誘拐してくるだけで許してやるからッ!
――――と言ってやりたい衝動に駆られているが、そんなこと言ったら怒られるので、心の中にしまっておく。
「いや、なんか悪いし週末何か奢ってやるよ。一緒に街でも見に行こうぜ」
……何か奢ってくれるのか。エレノアからの仕送りも少ないから少し困っていたんだよ。仕方ない、今回は初めてだし、それで手を打ってやろう。
「では予定を開けておきますね」
「ああ、じゃあよろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いします!」
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