第6話 俺が持つ聖女の力は!


 教会へとたどり着いた俺は市民の作った花道を歩き、教会の扉を開く。

 こういうのは慣れてないと恥ずかしいものだが、聖女はそういう感情を外に出さない。


 そういえば、街中で聖女はトイレに行かないとか聖女は食事をしないとかいう噂が立ってるらしいが、アレはウソだ。


 どこの誰が広めたのか知らんが、肩身が狭くなるからやめてほしい。


「ティア様、こちらにお手をかざしてください」

「はいっ」


 神官が差し出してきた水晶に手を翳す。


 この水晶はその人の持つ魔力から属性を判別する機能を持った魔道具だが、属性が大まかにしかわからない不良品でもある。


 簡単に言うと、水と氷、聖と光、闇と毒、他にも様々な組み合わせがあるが、この水晶は同じ光を放つのだ。光ったからと言って、自分の予測した属性とは限らないのだ。


「これは……っ!?」


 俺が手を翳すことで、水晶は白、緑、黄、紫の順番に光った。

 最初の白は間違えなく光属性だろう。だが他のはなんだろうか?


 判明しなかった属性は自分で1つずつ調べてみないとわからないのだ。この場合、最も効率的なのは魔導書だ。

 適正のない属性の魔導書を読もうとすると字が歪んで見えなくなるという特徴がある。


 おそらく、あとで1つずつ調べることになるだろう。


「ありがとうございます。では神に祈りを――――」

「はい」

 

 俺は主神イーリスを催した御像みかたを前に両膝をついて御祈りを捧げる。


「愛すべき臣民を守るため、皆に神の祝福があらんことを」


 こんなことを言ってるが、別に心にも無いこと言ってるわけじゃない。

 単純に主語が俺じゃないだけだ。国民を愛するのは国王の役割だからな。

 国民を愛さないヤツに王を名乗る資格はない。


 アイツが世界から消えるまで、俺の復讐は絶対に止まらない!





 ◇◇◇





 あれから数日が経ち、俺はエレノアとエドワードの二人と共に王都から立ち去り、自宅へと戻った。


「ただいまー!」


 家に戻るなり、俺はソファーの上に寝っ転がる。

 ハッキリ言って王宮での生活よりも馬車での生活の方がしんどかった。座り過ぎて腰が痛い。


「ティア!」

「まあまあ、家ぐらいティアの好きなようにさせてやりなよ。ここ数日は苦労したんだし」

「……せめて着替えなさい」


 さすがに自分も疲れているのか、エレノアはそれ以上言わず、俺に洋服を渡して自室へと戻って行った。


 俺が洋服を着ている時は【次期聖女】ではなく、【普通の女の子】として扱うというのが、我が家でのルールだ。


 とりあえず洋服へと着替えを済ませて再びソファーに転がった。


「疲れたぁ~」

「そうだな。けど、明日からはもっと忙しくなるぞ?」

「うへぇ……」


 実は明日から家庭教師が来るのだ。しかもその家庭教師は自身の魔法で本来読めないはずの魔導書を全て朗読し、あの変人を大量排出することで有名な『王都魔法学園』を首席で卒業した超ヤバいやつ。


 その異常な知識量から人々はその者のことを『歩く図書館』と呼んだそうだ。


「まあ、お前に必要なことだからしっかり学べよ?」

「はぁい……」




「……お父さんとお風呂に――――」

「いいよ」

「やっぱダメか…………えっ!? なんて!?」

「だからいいよって」



「よっしゃァァァアアアッ!!!」

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