第48話 あんまりソワソワしニャいで

「たっだいまー! みんなのアイドル、ねねちゃんでーす‼︎」


『………』


「びっくりした? びっくりした?」

 花が、ひょっこり顔を出した。

「サプライズってやつ? 今日は私達の『お客さん』で呼んだのよ。嬉しいでしょ? ねねちゃんに会えて」

 万副さんも、追加のまんじゅうを皿に盛りながら、にこにこ笑いかける。

 慌ててマシューから離れた繭がマシューに目をやると、見た事もない表情で固まったマシューがそこには居た。

 けれど、次の瞬間。

 トコトコと大人達の間をくぐってやって来たシロが、


 -ガブッ!-


 マシューの足の指を思いきり噛んだ。

「いっぁー‼︎」

 親指を抑えて転げ回るマシューに、

「ちょっとー! マシュー、大丈夫っ」

 ねねが駆け寄った。

「あらやだ、消毒、消毒」

 あたふたと万副さんが出て行き、

「こらっ、もも! 何てことするのっ!」

 怒った花が、シロを捕まえた。

「ニャー(けっ)」

 花の腕の中で、シロはそっぽを向いた。



 念の為、寮の目の前の病院で診察してもらうことになり、寮には、繭とシロの二人きりになった。


 シロが、繭の前に近寄って来て、

「ニャー(この間はごめんなさい)」

 ぺこりと頭を下げた。

「ううん」

 繭が首を振る。

「ニャニャー(でも、繭ちゃんにはどうしても、本当のお姉ちゃんを知ってもらいたいの)」

 そこまで言って、新ももは下を向いて言い淀んだ。

「ニャニャー(わかった上で答えを出して欲しいの。じゃなきゃ、お姉ちゃんかわいそう。だから…)」

「だから…?」

「ニャーッ(私とデートしてくれませんかっ)」

「は?」




 -数日後-


「おっ待たせー」

 公園の時計台の前に立つ繭の前に、エミリーが駆け寄り、

「白いワンピース、めっちゃカワイイ! やっぱももちゃんでも繭ちゃんでも白が似合うね!」

 ぐいっと繭の腕に自分の手を絡ませた。

「エミリーも髪の色に合ってるよ、黄色のワンピース」

「そう? ありがと。私はお姉ちゃんみたく金髪じゃないから、ちょっと残念」

 エミリーが繭の腕に頰をくっつけた。

「そんなことないよ。そんな髪の色、憧れるもん。私なんて黒だよ」

「すごいきれーな黒髪じゃーん。バースの尻尾と背中みたいだよ」

「何それー」

 弾けるように繭が笑った。


「じゃ、行こ。繭ちゃん」

「うん」



「………」

 この時、二人の背後には、二人のはしゃぐ姿をじっと見つめる、もう一つの影があった。

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