第20話 ニャン You Keep A Secret?

「で、この子、お花の娘?」

「ち、違うわよ。教え子よ。私、今、寮長もしてて」

「あ、まだ高校教師してるんだ。そっかー、じゃあ無理かー。お茶でもって思ったんだけど」

「あっ」

 繭は、椅子を引いて立ち上がった。

「私、今日寮に戻らないで実家に帰るんです。良かったら、ここ」

「えっ、いいの⁉︎」

「先生、私ここで大丈夫だよ。実家うち、ここからすぐだもん」

「…でも…」

「久しぶりに会ったんでしょ。本当に大丈夫だよ」

「そう。じゃあ、お家に着いたら一応電話して」

「……うん」

「あ、お代はいいから。気をつけてね」

「うん。じゃあ先生、ごちそうさま。あ、ごゆっくり」

 ぺこりと、お茂と呼ばれた女性にも、繭は一礼してその場を後にした。


(綺麗な人…)

 レジの近くで振り返った。

 グレーのスーツが似合っていた。

 花は、久しぶりの再会に夢中になっていたのだろう。繭を視線で見送ることもしなかった。




 -繭の実家-


「ただいま」

「きゃー、繭ちゃん久しぶりー」

「おー、しばらく見ないうちに大きくなったなあー」

「んな訳ないでしょ」

 リビングのソファに直行して、テレビをつけた。

「年頃の娘は冷たいなァ……」

 パパはしょげて小さくなって、繭の横に座った。


 一応、花に電話をかける。

 いつになく事務的な会話だけで、電話は切れた。

(まだ一緒にいるのか。そりゃそうだよね)

 ずっと好きだったのかなあ。

 まだ好き…とか?

 大人の色気…あったもんなあ…。

 50代なのに、30代くらいに見えた。


 はあ。

 ため息をつく。


 才色兼備の生徒会長なんて、所詮、高校内だけで効くアイテムの一つなだけだ。一般社会そとに一歩出てしまえば、青臭いただの17歳の女子高校生であるにすぎない。

 夕食と入浴を済ませ、早めに自分の部屋に戻った。

「勉強…するかなぁー。一応もうすぐ中間だし」

 呟いて、勉強机に向かい、ノートを開いた時だった。


「ニャー(ももちゃん!)」

 どこかで自分の名を呼ばれた気がした。

「えっ?」

 繭は慌てて窓を開けた。

「ニャー(こんばんは)」

 そこに居たのは、ローズだった。

「ど、どうしてここに⁉︎」

「ニャー(うん、ちょっとね)」

「あ、じゃあ。すぐ戻るから待ってて」



「何か変な感じ。私がローズを抱っこしてるなんて」

 優しくローズの肢を拭っていきながら、興奮ぎみに繭が言った。

(肉球、超ーカワイイ)

 抱かれながらローズが言った。

「ニャー(話があって来たの)」

「話?」

「ニャニャー(そう。とても大事な話)」

 繭は、ゆっくり、ローズを自分の前のクッションの上へそっと座らせた。

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