第4話 あなたと一緒に居られるニャンて
-校長室-
「あっ、あのう……、お呼びですか」
「あー、森野先生。実はね、先生に頼みがあってね」
「は、はい」
「寮長になってほしいんだよ。君に。すみれ寮の」
「へっ⁉︎」
「ほら、生徒会長の城咲繭君。あの子が寮に入ることになってね。今までは一人しかいなかったんで適当に先生方が宿直してくれてたんだが、二人になるならいっそ、となってね」
「あの、成績上位者だけが入れるところ…、ですよね」
「ああ。この間の全国模試で城咲君が50番以内に入ってね。平日は寮に入って週末は家に帰りたいそうだ。で、すでに入寮してる真中君にも聞いたら、『寮長は森野先生がいい』って言うんだよ」
(ウソウソ、繭ちゃんと一つ屋根の下で暮らしちゃうのー!)
「あ、でも校長、私、猫を飼っているんですが…」
「猫?」
「ハイ。白い、可愛〜い……、猫ちゃんなんですけど」
「
「そ、そうですか」
「寮費も取るつもりはないし。今まで通り
万副さん、とは、万田副子さんという栄養士兼調理師のパートさんで、おもに寮生たちの食事をかれこれ30年は作り続けてきている。そしてかくゆう私の、友人の一人だ。
「わかりました。前向きに検討してみます」
私はもうワクワクしながら、頭を下げるのが精一杯だった。
-生徒会室-
「マシュー、サンキューね。さっき花ちゃん校長室行ってたよ」
私が、マシューこと、真中周子の前にパックのコーヒー牛乳を置くと、
「じゃー、チューして」
彼女は唇を突き出した。
「しないから」
生徒会長の椅子に腰掛けながら笑った。
彼女は生徒会副会長で私に101回どころか、かれこれ200回以上付き合ってほしいと言ってきているくせに、実はちゃんと彼女がいる。私の親友のねねだ。
「どーゆー事?」
一回、真顔で聞いた事があった。
すると彼女は、
「私は同時に二人愛せる」
そう、しれっと言ったのだ。
でも。 私は怒らなかった。
いや。
怒れなかったのだ。
「あ、じゃあマシュー、来週からよろしくね」
「うん。こっちこそよろしくね」
なぜなら。
足早に家に帰ると、ギリギリ間に合った。
ゆっくり私は猫に戻ってゆく。
-ももちゃん、土足禁止よ-
って、花ちゃんが私を時々からかう、靴を履いたように見える前肢のこげ茶の毛が見えた。
と、その時。
「ニャー」
一匹の猫が私の前に現れた。
「ローズ!」
私は嬉しくて、駆け寄って彼女に体を擦りよせた。
彼女は。
猫の時の私の恋猫で。
グレーというより銀色に近い毛と、絹のように真っ白い毛を持つ、それはそれは美しい猫だった。
「ももちゃん。静かなトコ行かない?」
「うん」
頷いた。
彼女に名前を呼んでもらえるだけで、ゾクゾクするほど嬉しい。
トコトコと、彼女の後に従う。
人間になると、真剣に花ちゃんを愛してる。
猫になると真剣にローズを愛してる。
こんな私が。
マシューにあれこれなんて。
言えるはずないのだ。
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