第5話 あニャたとの甘い一日
-ローズの家-
「あら、ミケちゃん来たの」
ローズの飼い主のおばあさんが私を抱き上げた。
なぜかおばあさんは、私をミケちゃんと呼ぶ。
「ニャー(おじゃまします)」
ひと通りの挨拶を済ませると、
「こっち」
ローズに誘われて、ふたりでキャットタワーに登り中に入った。
「ももちゃん」
ローズが私の名前を呼びながら、私の胸に顔を擦り付けてきた。
「ももちゃん大好き」
彼女は会うといつも愛情を惜しげもなく注いでくれる。
私はというと、ぼうっとして体が火照ってしまい、彼女のようには上手く接することが出来ない。
だから。
せめて言葉だけは正直に伝えることにしている。
「私、ローズのこと大好き。でも自分に自信がないからどうしてもまごまごしちゃうの」
人間の姿になれば私は美少女といわれるくらい整った容姿になる。でも猫での自分の容姿には全然自信がなかった。
「ももちゃんは可愛いの」
-ペロッ-
私の口元を、ローズが優しく舐めた。
「綺麗な毛並みでしょ。くりくりした目でしょ。とってもとっても可愛いの」
いつか。
-なんだ、普通の雑種じゃない-
って。
言われる時が来るかもしれない。
でも、今だけは夢を見ていたい。
「毛づくろい、してもいい?」
甘えるように尋ねた。
「いいの?」
「うん。ローズの毛を舐めてあげたいの」
私は、彼女の銀色の、ツヤツヤした毛に舌を這わせる。丁寧に、愛情を込めて。
舐めていくうちに、コロンと気持ち良さそうにローズが横になった。
首元から、背から。しっぽの先まで。
「とっても気持ちいい。ももちゃん、ありがと」
この一言で、私は有頂天になった。
やがて、ローズの毛がキラキラ光を放つ頃。
彼女の前肢がゆっくり私に伸びてきて、抱き寄せるように、自分の横に私をそっと寝かせた。
そして、
「次の発情期が楽しみだね」
彼女が私の耳元で囁いた。
「………うん」
ローズに視線を合わせられないまま。俯いて、私は小さく頷いた。
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