第3話 同居生活
今日は、きっと給料日だ。
ちょっとだけ豪華なお刺身が食卓に上っている。
「特別ね」
って。
一切れ、マグロを私の食器に乗せてくれた。
「ニャー(ありがとう、花ちゃん)」
私は満面の笑みを浮かべて鳴いた。
いつもなら。
この時間は明日の授業の教材作りや、生徒たちが覚えやすいようにと年号の語呂合わせを考えるんだけど。
明日は学校もお休みで。
「花ちゃんの花金よ」
って言って。
時代劇を、今日は瓶ビールを傾けながら観ていた。
でも。
『「ひっひっひっ。
「まあ、お殿様、お戯れを」
「よいではないか。誰もおらぬ……」』
-ピッ-
慌てたように花ちゃんはテレビを消した。
(まただよー。いいトコだったのに)
そう思って花ちゃんを見ると。
「ももちゃんには、ま、まだ早いわね」
真っ赤になってそう言った。イヤイヤイヤイヤ。
ってゆーか、猫の年齢じゃ、私チャキチャキの成猫ですから。
食事とささやかな晩酌が済むと。
花ちゃんはお風呂に入る。
花ちゃんがお風呂に入っている間は、私は毛づくろいをして静かに待っている。
週に一回くらいは花ちゃんがお風呂に入れてくれているけれど。
実は私は、花ちゃんが出勤で朝自宅を出るとすぐ実家に戻ってシャワーを浴びて学校に行くから、基本かなり清潔だと思う。
実家の猫窓をくぐるころちょうど人間の姿に戻るから。
やがて時計も十時を回る頃。
私は花ちゃんの手の甲をペロッと舐めた。
「あら、もう眠いの?」
「ニャー(はい。眠いってゆーか、寝たいです)」
「じゃ、ちょっと早いけど寝ましょうか」
「ニャー(ハイ。早く、早く)」
私は花ちゃんが蒲団を敷くのが待ち遠しくて、ワクワクしながら、しっぽをふりふり、待っていた。
なぜって⁉︎
だって、花ちゃんのおっぱいを枕にして、モミモミしながら寝るのが大好きだから!
花ちゃんのおっぱいは爆乳だから、横になると蒲団からはみ出ちゃう。そこに私は頰を乗せて眠るのだけど。
眠る前のひととき、ツメをしまってモミモミする。
いや、ちょっと前まではモミモミはしていなかった。
言い訳じみているけど、本当は、少し垂れ下がりぎみのおっぱいに馴れていたから、最初はただただ迷惑だった。
頰を乗せると、弾き返すほどの弾力になってしまったから。
だから。
(んだよ、これ)
キレ気味に、寝床を直す感覚でモミモミしてたくらい。
でも。 病みつきになった。
花ちゃんは私がモミモミするたびに、
「そんなに揉んでもオッパイ出ないよー。ごめんねー」
って言って。 優しく
(私が城咲繭なんだって言ったら驚くよねー)
なんて。
時々悪戯っぽく思うけど。
もうちょっと。このままの関係でいたいから。
モミモミモミモミ。
弾けるようなおっぱいを、私は真剣な
「ごめんねー。そんなに揉んでもオッパイ出ないよー。ももちゃんごめんねー」
「ニャー」
私は、花ちゃんを見上げて言った。
わかってるよ、花ちゃん。
私、わかってるから。
花ちゃんが、マジメで、頑張り屋さんで。とっても優しい人だって。
全部全部、わかってる。
「おやすみ、ももちゃん」
「ニャー」
ゆっくり。
私は、花ちゃんのおっぱいに頰を乗せた。
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