第2話 ニャンだかんだで両想い

 私の名前は城咲繭、17歳。

 いや、猫での名前は、森野もも、2歳。


 そう。

 私はの二つを生きている。

 私と花ちゃんとの出会いは二年前。

 ケガをした私を助けてくれたのが、花ちゃんだ。


 私は花ちゃんが大好きになった。

 心の底から。

 だから。

 猫の王様にお願いをした。


 -人間になりたい-

 って。

 王様は、

「それならば、清く正しく生き、百八つの善を積め。そうしたら、一日のうち、半分だけ人間にしてやろう」

 そうおっしゃった。


 私は。

 立派な猫を目指した。

 ケンカはしない。

 意地悪もしない。

 嘘もつかないし、誰かをひっかくなんてこともしない。

 猫の頭で考えられるだけの善を積んだ…。


 そして。

 城咲繭という、女子高生になった。


「ただいまー」

「あ、繭、お帰りー」

「今日はパパも早いぞー」

 綺麗なママと。

 カッコいいパパ。

 でも。

 実は私の家族は寄せ集めの半分家族で。


 このママの人間名は城咲久子、36歳だけど。彼女もまた、を半分生きている。犬の時の名は、ナタリー。綺麗な毛並みのラブラドールだ。


 そしてパパは人間名は晶。歳はママと同じ。そしては『ユミトリテイオー』。サラブレッドだ。


 二人も何らかの理由から人間になったらしい。

 私たちは、それぞれを尊重しつつ仲良く家族を


「ご飯、今日もいいの?」

「うん。先生のとこの猫缶食べるよ」

 宿題をしながら私は言った。

「学校、大丈夫?」

 ママが心配そうに尋ねた。

「うん。とりあえずね。ママこそ大丈夫なの?」

「聞いてー。それがね、公園の横通ったらフリスビー投げてる男の子がいてねー。もォー超ー、くわえたくなっちゃってー、体がウズウズしたのー」

 ママが体をくねらせた。

「わかるなあー。パパはラッパだ。あの音を聞くとこう、お尻のあたりを振って駆け出したくなるんだ」


 これが。

 寄せ集めの城咲家の、いつもの会話だ。



「じゃ、猫窓開けておくからね」

 いつものように、ママがアパートまで見送ってくれた。

「うん」

 そして、私は猫になって花ちゃんを待つ。


 屋根裏に猫用の出入り口があって、それがアパートのロフトにつながっている。ほとんど使われていないこのロフトに、女子高生の時の服を隠している。


 やがて、

「ただいまー」

 花ちゃんが帰って来た。

「ももー、いい子にしてた?」

「ニャー」

「今日ね、私の最愛のー、繭ちゃんとね、お話しちゃったー! キャー。しかもしかもー、私のこと、助けてくれるようなこと言ってくれたのよー」

(キャーって、自分で言ってる…)


「頭も良くて、きりっとした美少女なのよ。なのに、なのに! 心延こころばえまで美しいのよ」

 一応。

「ニャー(おそれいります)」

 って。

 私は鳴いた。





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