➁ちらし寿司 #最高の祭り
酢飯「ああ、今日もこの日がやってきたか。一年に一回、俺が食われる日」
錦糸卵「お前はいつでも食われるだろ。僕なんかこういうときにしか作られないんだから」
酢飯「おお、錦糸卵か。桶の外から聞こえる声の主は」
錦糸卵「ああそうさ。別にお前は握り寿司とか、巻き寿司とか……汎用性かなり高いじゃないか」
酢飯「まあ、たしかにそうだが。でも握り寿司を家で作ることはないだろ?」
錦糸卵「でも手巻き寿司なら家でも作るんじゃないか?」
酢飯「あ」
錦糸卵「それに恵方巻きがあるから、年に二回だな」
酢飯「……まあそれぐらい少ないってことだよ。細かいなぁ」
桜でんぶ「まあ一か百かの話ならまだしも、女の子のいない家庭だったら私が登場することは全くないからね」
酢飯・錦糸卵「あ(察し)」
桜でんぶ「まあいいんだよ、私は。ここぞっていうときに使われる役で。まあジョーカーみたいな? そのほうがなんかかっこよくない?」
ネギ「確かに。侍ジャパンで言うところの周東選手みたいな。かっこいいよね〜」
酢飯・錦糸卵・桜でんぶ「お前は黙ってろ!」
ネギ「す、すみません……」
<すこしあと>
人参「なあ、かんぴょう」
かんぴょう「なんだ、人参」
人参「お前さ、いつも何してんの?」
かんぴょう「色々あるよ。ほら、甘辛煮とか」
人参「他には?」
かんぴょう「…………聞くなよ」
人参「……笑」
かんぴょう「わーらーーうーーなあああ!」
たけのこ「まあまあ、かんぴょうさん。今使われているだけいいじゃないですか。私達は家庭によっては、使われないこともあるんですから」
しいたけ「せやせや。今日ここに来られなかった海の幸・山の幸もたっくさんおるんやから。みんなの思いを背負って、うちらはここにやってきとる。それを自覚して、今日は食べられないといけないんやで」
かんぴょう「あれ? 今日のしいたけは元気いいし、なんか言葉変じゃない?」
人参「あとおしゃべりだし……」
しいたけ「ん? うちの言葉が気に入らへんのか?」
たけのこ「いえいえ、このあたりではあまり聞かない言葉遣いでしたので」
しいたけ「なんや? ここに関西のもんが来るのは初めてなんか?」
人参「関西って、どこですか?」
しいたけ「徳島や。あ、もしかしてこれまでここに来とったんは北海道とか岩手県とかからやろ」
(二〇一六年時、しいたけ生産量は全国一位から順番に徳島県、北海道、岩手県らしいです。ちなみに、当時全国一四位だった大分県は、干ししいたけの日本有数の産地として知られているらしいですよ。by今日は呼ばれなかったいくら)
しいたけ「まあ確かにそれやったら気持ちもわかる。せやけど、大分からきた干ししいたけとかも知らんのか」
たけのこ「うちに来るしいたけさんたちは、みんな何故か寡黙な人たちでしたので。あまりお話されているところを聞いたことはないんです」
しいたけ「なるほど。まあ食われるまでの短い間やけど、ちらし寿司でレギュラーでないもん同士、仲良くしよーな!」
れんこん「はい! よろしくお願いします!」
全員「お前はレギュラーだろうが!」
れんこん「えぇ…………」
*
ネギ「つらいよなぁ。有名って」
れんこん「うん。僕なんかレギュラーってだけで怒られたのに。他にもいるでしょ。酢飯とか、桜でんぶとか……」
fin......?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます