どこか疲れた様子だった。

 その日の昼休み。

 購買で購入したパンを急いで胃袋に収め、休み時間をフル活用してこの第二教棟全部の教室を見て回ったが、あの少女の姿は無かった。


「どこにいるんだ……。名札の色は同じだったのに……見間違えたのか……?」


 俺の通うこの高校は学年で名札の色が分かれている。俺含む一年生は青、二年生は白、最高学年である三年生は緑、と色が異なっている。この色は学年が上がっても引き継ぎ、三年生が卒業すると次の新入生がその色を継ぐというループになっている。


 第二教棟を見回った後、俺が名札の色を見間違えた可能性も考え二、三年生の教室も見て回ったが姿は無く全て無駄足に終わった。



「はぁー……。結局あの子は誰だったんだ……。明日は土曜日だから見つけておきたかったんだけど……」


 下校中、信号機に足止めをくらってしまい、青に変わるのを待ちながらため息を吐く。土日を挟んでしまうから今日中にあの少女の尻尾を掴んで置きたかったんだけど……。


 ブツブツと考えながらもいつも通り帰宅した。昨日と同じく玄関には靴は無く、まだ誰も帰ってきていない様だ。



「おーい、いるかー?」


 自室で一人、呼び声をあげるが、その声に返答は無い。


「ん……?愛しい愛しい猫ちゃんやーい」


「煩いにゃあ……」


 再度呼んでみるとベッドの上に無気力な声とともにクロアが現れた。言い終わった後に大きな欠伸をしている。


「なんだ、いるじゃないか……って何か疲れた様子だけど何かあったの?」


「ニャッ!?い、いや〜、別ににゃんもにゃいよ〜?」


 クロアがどこか疲れている様に見えたので聞いてみると、あからさまに動揺する素振りを見せる。完全に目が泳いでるんだけど……。


「そ、そんにゃ事より!!学校でにゃにかにゃかったのかニャ?」


 露骨に話を逸らしてきた。

 まぁ、いいか。


「そうだ!!今日学校で猫耳が絶対似合う女の子を見つけた!!」


「いや、そうじゃにゃくてだニャ……。呪いに関係する事はにゃかったののかニャ?」


 俺の言葉に呆れつつも話を進める。


「うーん……その女の子を探す為に学校中見て回ったけど、その時にそれらしい人は見なかったかな」


「えぇ……学校中って……。まぁ探した理由がにゃんであれ、傍からみても分からにゃいって事ニャ……。……てか、貴方はあの坊主頭しか友達とか居にゃいのかニャ?」


 考える素振りを見せた後、続ける言葉とともに半目、所謂ジト目で俺を見つめてきた。


「え?何でそんな事知って……あぁそうか!魔法で透明になって見てたんだな〜?エッチ!」


 自分を抱く様にわざとらしく腕を体に回し身をよじらせる。すると、より一層ジト目の眼光が強くなってしまった。


 あ、怒っちゃったか……?


 と、俺が思うのも杞憂だったのか、クロアは何故か少し嬉しそうな顔を見せた。


「にゃら良かったニャ」


「え……?何が良かったの?」


「にゃふふ……それは……」


 クロアは不敵な笑みを浮かべる。

 そして、右前脚を俺に向けて突き出して可愛くキャピっと言い放った。


「来週のお楽しみニャ!」


「えー……何そのCMの後で見たいな言い方……」


 まぁそれ超絶神的に可愛いんだけど。

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