通学路と不思議な黒猫。
懐かしい夢を見た。
俺がこんなにも猫を好きになる原因。
それは、ある一匹の黒猫が始まりだった。
黒猫と出会ったのは、俺が小学一年生の時。
入学して数週間が経った、ある日の事。学校へ行くために班と一緒に歩いている時だった。
通学路を通っていると、向かい側の路地裏から黒猫が出てくるのが見えた。
綺麗な黒猫だなぁー、飼い猫かなぁー?でも首輪してないなぁー。可愛いなぁ〜。
俺がぼーっと黒猫を見ていると、通学班の班長である六年生の女子が「早くしろやコラァ」と言い出しそうな表情で此方を睨みつけていた。
怖っ!六年生怖っ!さっきまで優しいお姉さんだよー的なオーラを出していたのに豹変し過ぎ!
これ以上六年生を怒らせない為に、さっさと行くかと黒猫の方へ振り返る。
「黒猫ちゃん、バイバ…い?あれ?黒猫ちゃん?」
俺が振り返ると、既に路地裏には黒猫の姿は無く、俺は周りを見渡す。
すると、俺の進行方向とは逆、今通ってきた方向の歩道では無く、道路のド真ん中をトコトコと歩いていた。
「おーい、黒猫ちゃーん危ないよー!………聞こえてるのかなぁ……」
黒猫へ声をかけるが、此方をチラッとも振り返らず遂にはそのままぺろぺろと毛繕いを始めてしまった。わかってるかもしれないけどそこ道路だよ?
「危ないなぁ……。班長、僕後で走って追いつきますんで先行っといて………って、もういない……。まぁいいや時間はまだあるし、黒猫ちゃんを非難させてからでも十分間に合う」
そう呟くと来た道を戻り、黒猫の隣まで近づきしゃがみ込んだ。
「ここら辺の猫ちゃんなら近づいたら直ぐに逃げるのに、なんで君は逃げないの?」
そう問いかけるも、黒猫はほっといてくれと言わんばかりに此方を見ようともしない。
「車が来ちゃうよ?轢かれちゃうよ?」
無反応。
すると、黒猫は欠伸をした後、ようやく此方を向いた。
路地裏から出てきた時は分からなかったが、黒猫の瞳は右が青色、左が紅色のオッドアイでとても綺麗だった。
暫く無言で眼を合わせていると、黒猫は痺れを切らし恥ずかしそうにぷいっと顔を背けた。
「やったー!しょうとの勝ちー!えへへ。けど本当にそこは危ないから、のいたほうがいいよ?ほら、車来た」
俺の通う学校へ向かう方の道路の奥に小さく車が見える。時間が経つごとにその影は大きくなってくる。
それでも黒猫は動かない。
だんだんと車が近くなる。
運転手さん、すまほ触ってる!これじゃあ黒猫ちゃんに気づかないんじゃ………。
既に黒猫と車の差は残り数メートル。
もうダメだ!
今になって我ながらこの時は馬鹿だったと思う。
俺は飛び出していた。
黒猫に向かって駆け出す。
すると、俺が飛び出したのに運転手は気付いたようで急ブレーキをかける。だがもう遅い。
まぁこのおかげでこの黒猫と出会えたのだ。背に腹は変えられんというやつだ、違うか違うな。
俺は車から守ったつもりなのか分からないが黒猫を己の体で覆う。こんな状況で考えることではないと思うのだが、黒猫の毛並みはそれはもう触り心地が極上だった。
………あれ?何も起こらない……。
すると、いつまで経っても来るはずの車が来ない。
俺は恐る恐る顔を上げると、そこは先程までいた道路では無く、自分が通っている小学校の運動場の中心に座り込んでいた。
「え?どういうこと?……あは、あはは……」
どういうこと?と、脚の間で佇んでいる黒猫に目をやる。
すると、今まで毛繕いをしていた黒猫は此方を向いた。そして、とても可愛く微笑みながら、
「君の学校、ココであってるだろ?違ったかにゃ?」
「………え……え?猫が喋ったぁあ!!!??」
これが俺と不思議な黒猫、《凛》との出会いだった。
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