白い世界と黒い猫。
目元がピクピクと動く。だんだんと意識が覚醒していき、右手で頭を抑えながらゆっくりと左手で身体を支え起き上がる。
「っ、ここは…どこ……だ?」
何も無い真っ白な世界。どこまでも続いていそうで距離感が掴めない。少し肌寒い。そんな白い空間が目を開けると広がっていた。
だがそんな世界に何故か懐かしさを感じた。
「確か何処かで……」なんて思い出そうとしていた時。
「ッ⁉︎………てぇ‼︎⁇……」
突如、頭痛に襲われた。頭の奥底からズキズキと、まるで思い出すのを阻害するかのようなタイミング。しかし、その痛みは時間が経つとともに徐々に消えていった。
「謎の場所で目覚め、直後に頭痛とか……それも激痛………」
数秒、頭痛の残響に魘されながらもこの場所へ来る前の事を思い出す。
「それはそうと、確か俺は教室に居たはずなんだが……」
謎の目眩により倒れ意識を失ったはず…。
そして、目覚めると俺が居るのは謎の白い世界。一体ここはどこなんだ。
頭痛の残響がさっぱりとなくなったのを感じ再びキョロキョロと周りを確認する。
「本当に真っ白だな」
ため息とともに白い世界で一人呟く。
なんだここ?なんだこの状況?新手の異世界転生か?それとも異世界転移か?
「……異世界か、それも悪くないな」
目を閉じ顎に手をやり「ムフフ…」と頭の中で思い浮かべる。
まぁ異世界なら?地球に居ないような猫ちゃんがいるかもしれないし?サイズが大きかったり?あり得ないような毛色だったり?毛並みだったり?喋ったり?あるかもしれないし?ヤベェ……想像しただけでニヤケが止まらねえ……。
「フヒッ……フヒヒヒヒッ」
口が某クレヨンしんちゃん並みに開き、気色の悪い笑い声が、どこまでも続くようなこの白い世界に響いて木霊した。
だが、その笑い声も直ぐに止まり俺の気分が少し落ち着く。
「まぁ、もし異世界に行くならば、、もう会えないのか……」
異世界への期待が膨らむ一方、それに伴いある不安も膨らんでいた。それは今まで会った猫達の事。目尻が熱くなり一粒の雫が頬を撫でる。だがそれを袖で拭き取るとバッと立ち上がる。
「まぁこんな事考えてもしゃーない!まだここが異世界って決まったってわけじゃないしな!まずはここから脱出する方法を見つけないとな!」
まだ涙潤んでいる目をあるのかもまだ分からない白い世界の天井に向け、決意し、この白い空間の探索を始めたはずなんだが……。
探索開始約三十分後。
「ハァ…ハァ……疲れた…。なんだここ……猫一匹いねぇじゃねぇか……」
荒く息を吐きながら、背中を支えるように両手を後ろでつき倒れる。ある程度呼吸が整った後、俺はある仮説を頭の中で立てた。
「これはアレだな、うんアレだ」
俺は両手をパッと広げ目一杯自分の頬を引っ張ったりつねった。目一杯引っ張ったせいか口が半開きのまま一文字になり、つねった頬っぺたは赤く色付いている。だが……俺の口はニッと笑う。
「……痛くない、と、い、う、こ、と、はー?!この白い世界は夢という事だ!」
その仮説を自分の中で立証。夢すなわち覚める、つまり時間が経てば、あるいは何かアクションが有れば俺は起きるはずだ。
だとすると、一つ疑問が残る。
「ん?まてよ、初めに目が覚めた時頭がめっちゃ痛かったような……。んん?ここは夢じゃないのか?んー
……」
自分の立てた仮説の欠点を見つけてしまい腕を組み「んん…」と唸る。
どういう仕組みになっているのか考えていると、視界の端に何かが見えた。
「………?」
微かにしか見えないが確かに何かが見える。
その正体を確認する為一歩、また一歩と近づく。
すると段々と認識できるまでには近づいた。
「……あ、アレは……」
「……黒、猫?」
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