第6回 ファイアーエムブレム 聖戦の系譜(SFC)

「受け継がれるのは、光か闇か」


 私が北欧神話とケルト神話を知ったのはこの作品がきっかけでした。もちろんそのまま導入されているわけでなく、キャラクターの名前などに採用されているだけだったのですが、ギリシャ神話と日本神話くらいしか知識のなかった自分に他の神話の存在を強烈に焼き付けてくれたものでした。

 ファイアーエムブレム4作目はこれまでと違い、完全に別の物語。一応時系列的には前3作の過去に当たるそうなのですが直接の関係はあまり見られません。


■物語

 グラン歴440年。暗黒神ロプトウスが大司教ガレに降臨。ロプト教団が成立。447年に十二魔将の乱が発生。グラン共和国が滅亡してロプト帝国が成立。

 恐怖の支配の中で632年、解放軍の十二人に神が降臨し、十二聖戦士が誕生。ロプト帝国を滅亡させた十二人はそれぞれ国を興して100年後、そして十二聖戦士の末裔の一角が反乱を起こし、討伐のために諸侯が同盟を結成。その結果、手薄になった本国が隣国から攻め込まれたことから物語スタートとなります。


 はい、かなり簡略化しましたがやっぱり今のWEB小説でプロローグにしたら速攻ブラウザバックされかねない冒頭です(汗)


 まあ実際この前提はあまりシナリオ攻略で必要なものではないのですが、物語では十二聖戦士の末裔たちが敵味方に分かれて大戦争を行うことになります。

 それぞれ直系は専用の武器を持ち、それを手にしたものは強力な補正を受けて無双の力を誇ります。そのため、神器持ちには簡単に近づかない。同じ神器持ちか突出した力を持つ味方で立ち向かうなど、後半になるほど激戦になります。パラメーターの成長率も左右するため、血を引く者がとにかく優遇されています。

 外交、同盟、謀略と裏切り。敵味方の陣営もシナリオ中に切り替わるなど「紋章の謎」よりもエグい演出も数多く生まれています。回避できない味方の死。戦場の常と言えますが、手塩にかけて育てた仲間が倒されていくのを見ていることしかできない5章はプレイヤーの記憶に強く刻まれているでしょう。


 第二部の子世代になると志半ばで倒れた親の敵討ちと悲願を果たすために地方から解放軍を結成して中央へと向かっていく展開が前作と似ている点がありますね。

 十二聖戦士の話の真実も判明し、蘇ったロプトウスとの決戦と続いて行きますが、ここでちょっと悲しいのが切り札が主人公じゃない点。

 セリスは解放軍の盟主ではあるけれど、神器を使うことはできるけれど、ボスに特攻を持つ武器を使えるのは仲間の一人。この子は途中で離脱してしまうので育てておかないと終章では不利になってしまいます。(まあ神器のパラメータ補正が凄まじいのである程度は大丈夫なのですが)


■攻略の変化

 前作までは敵城を制圧したらそれでゲームクリアでした。ですが今回は広大なフィールドに城がいくつもあり、それらを一つ一つ落としながら敵の本城に迫ります。途中蛮族に襲われている村の救出にも向かう必要があるのですが、城を落とさないと入れないエリアもあるため、制圧までの速度が救出に関わる場合があります。

 そして敵城制圧のために全軍で攻め込んでいたら別の城から敵軍が現れて後ろを突かれるなんてこともあるので、敵のターンでの動きやワープの杖などを駆使して城を護る戦略を練ることも求められます。単純に敵を全滅させればいいと言う訳ではない辺り、プレイヤーごとの攻略方法が求められるゲーム性を備えている感じがわかります。

 後のシリーズでも導入されている武器の三すくみの登場も見逃せません。剣には槍。槍には斧。斧には剣。魔法だと風に炎。炎に雷。雷に風とそれぞれ有利な武器が設定され、命中率が変化するのでそれを見越して敵に挑む必要が出てきます。ただ相手に斧が多く、自勢力に剣が多いため、序盤からかなり有利に進めることが可能になっています。逆に相手に槍がいる時はかなり厄介でした。兵種によって武器の熟練度が設定されているために強力な武器を装備できるメンバーも固定されてしまっています。この辺りをどう乗り越えるかは編成と誰を成長させるかの試案のしどころでもありましたが。


■結婚システム

 この作品で恐ろしいのは過剰なまでのやり込み要素。親世代でキャラ同士を恋愛関係にすることで第二部の子世代の物語において登場するキャラの戦力が変わっていくのですが、この組み合わせだけで物凄い考えさせられました。

 物語上の会話、関係から結ばせるか。全く関係なさそうな二人を結ばせるか。スキル重視にするか。攻略本を参考に戦略と恋愛関係の成立の両立を狙うというなかなかに高難易度なプレイを要求されました。

 親世代は計画結婚。子世代は自由恋愛と、親世代になんか申し訳ない感じはありますが、一部の固定カップリングを除けば全男女キャラが恋愛可能と言う物凄いシステム。このシステムは後の「覚醒」などにも受け継がれ、子世代をどれだけ強くできるかを考えてカップリングを試行錯誤しました。

 私としてはホリンとアイラのオード傍系組。ミデェールとエーディンのユングヴィ主従組。レヴィンとフュリーのシレジア主従組。父娘会話狙いのフィンとラケシス組。クロードとシルヴィアの禁断組。デューとブリギットの盗賊&海賊組。アゼルとティルテュの幼馴染組が鉄板カップリングでした。

 2週目は攻略狙い編成。ティルテュはレヴィンとカップリングさせ、6章からアーサーに神器フォルセティを継承。エリートリングで一気に育てて7章にはクラスチェンジさせることでリングでドーピングしたマージナイトがフォルセティ持って敵陣に突っ込んで蹴散らすという外道戦略で高速クリアを目指しました。

 ホリンとアイラの組み合わせだと流星剣と月光剣の両方が継承され、オード直系並みの成長率を備えて勇者の剣でばっさばっさと切り捨てる。セリスはシグルドから継承した必殺付きの銀の剣で殴り込む。


 ……まあその結果、数人いれば殆ど敵を殲滅できる状態になってしまったので面白みはかなり減ってしまいました(汗)


■まとめ

 攻略回数に応じてオープニングのデモが変わるなど、やり込み、周回することを見越して作られているところがいくつも見られます。

 大沢美月先生の漫画版は結構お気に入りです。人間ドラマをより深く書いているのでアルヴィスにかなりの感情移入できます。あの人もかなり血に振り回された人生なんだなと、本編でも思いましたが漫画で深堀りされたことでよりその点は自分の中で強調されました。

 スーパーファミコンのゲームって今と違ってキャラごとのグラフィックのバリエーションがない分、シナリオや台詞、細かいシステムの点で様々な想像力を掻き立てる力に優れていたんじゃないかなと今は思います。プレイヤーが想いを馳せることのできるゲーム。素晴らしいですね。


 今回はこの辺で。

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