第5回 ファイアーエムブレム 紋章の謎(SFC)

「ファーイアーエームブレーム。てーごわいーシミュレーショーン」


 口ずさむことのできる方も多いのではないでしょうか。今回は現在も続くシリーズもの、ファイアーエムブレムについてです。


 小学生の時にデパートの試遊台で遊んで大いにハマったのがこの作品。当時は前日譚となるFC版の「暗黒竜と光の剣」の存在は知らなかったのですが、攻略本を購入したことによってその存在を知ることになります。

 私にとって初めてのシミュレーションRPG。落ち延びた亡国の王子が仲間を集めて再起すると言う日本人が好きな貴種流離譚きしゅりゅうりたんの王道ストーリー。歴史や外交関係、所属、地理、兵種もしっかりと設定されており、単なる駒としてだけでなく、キャラクターに思い入れを深めながらプレイができるものとなっています。

 私にとって中世ヨーロッパ風のファンタジー世界のイメージはドラクエとこの作品から非常に強い影響を受けています。特に軍と軍の戦い、集団戦になればこちらの影響が強くなります。


■手強いシミュレーション

「やーりーはじーめたーらーねーむれないー(歌)」


 ターン制の戦略シミュレーションゲームですが、最大の特徴として、「失った仲間は戻らない」という点がよく挙げられます。戦争の中で倒れて行く仲間たち。このゲームでは本当にロストすることになり、基本的に二度と帰ってこなくなります。(終盤で復活させることはできますが、成長させる機会がもうありません)

 後のシリーズでは難易度設定によって戦場からの離脱で済んだりしますが、この時代ではHP0=死となり、お気に入りのキャラを戦場に出して前線で成長させる=死の危険性が高まるというリスクを負いながら戦うことになります。

 この緊張感たるや、そして失った時の絶望感たるや相当なもの。どれだけ精鋭になっても死ねばそれで終わり。持っていた武器も失われる。残された戦力でなんとかクリアしていかなければなりません。中にはラディみたいにとんでもない成長率のキャラもいますが、シナリオに関わる機会がほとんどなく、使われないことも多いです。それを見抜くのもプレイヤーのやり込みが必要でした。

 私は初めてプレイした頃、アベルやナバールを失ってしまい、とても悔しい思いをしましたね。


 戦略面も相当考えなくてはいけません。アーマーナイトのように守備力の高い仲間で敵を釣り出し、弓兵や魔導士で遠距離から削り、傭兵や勇者で斬り込む。そして騎馬兵や天馬騎士ペガサスナイトで掃討、奇襲と、兵種に合わせた運用をしなければ難易度は跳ね上がります。武器にも耐久があり、使い続けていると壊れてしまう問題が生じます。魔導書なんて消滅してしまいます。強力な武器に頼るのではなく、状況に合わせた武器の選択が求められ、それを購入する資金もどう運用するかなど、考えることは非常に多くなります。


■第一部「暗黒竜と光の剣」

 百年前に滅ぼされた地竜王メディウスが復活。ドルーア帝国を率いてアカネイア大陸全体を巻き込む戦乱へと突入します。

 メディウスを討伐した勇者アンリの子孫マルスは同盟国の裏切りに遭って父を喪い、姉もドルーア帝国に味方する魔導士ガーネフにさらわれながらも国を脱出。少ない手勢と共に辺境の国タリスへと落ち延びる。物語は二年後。タリスの城が海賊たちに襲われたことでマルスは初陣を迎える。


 ……と、今ラノベで書いたら思い切り逃げられそうな序章ですね(汗)


 ここから人数僅かなアリティア軍は地方から徐々に勢力を拡大し、帝国の手に落ちていた地域を奪還。アカネイア王国のニーナ王女により覇者の証ファイアーエムブレムを授けられ、同盟軍の盟主としてメディウスを討伐することになります。


 ちなみにこれ、FC版の時点の話なんですよね。SFC版ではこの物語の第二部として「紋章の謎」が描かれます。


■第二部「紋章の謎」

 SFC版で追加されたシナリオ。前回の戦いの後を描きます。前作でただの盟主の証ならびに宝箱を開けることのできる無限耐久度の鍵みたいな扱いだった炎の紋章ファイアーエムブレム、便利アイテムだったオーブでしたが、その謎と百年前の戦争のエピソード、神話の世界などが複雑に絡み合っていくことになります。

 このシナリオでの特徴は第一章の仲間が敵として登場する機会があること。力を合わせてメディウスを倒した仲間たちが敵に回り、反乱軍にされてしまったアリティア軍を討つために刃を交えることになります。

 一部はまた仲間になりますが、止むを得ず討たねばならない者、どうしても命を落としてしまう者などがいるため、前作で思い入れのあるキャラであれば辛いものがあるでしょう。(それもまた戦争の常と言えますが)

 第一部では主に敵を殲滅するだけだった戦いも、撤退戦や絶対に戦ってはいけない相手が登場するなど、引き際を考える要素も追加され、より戦いに臨場感と緊張感が加わりました。

 そして特定の条件を満たさなければ終章へ突入できないという要素も導入。この辺は攻略本を読み込んでいなければ私もクリアできなかったかと思います。

 ただ、完全クリアのためには特定のマップで特定の味方を編成に組み込む必要があります。育てたいキャラがいるのに固定枠を埋められてしまうのはなかなかにきついです。

 終章に至っては固定枠のマルス。ジュリアン、マリク、ミネルバ、シリウスの四人が必要になるため、出撃可能な十五人のうち、三分の一を削られてしまうために自由な編成が難しい問題が生じます。そこだけは残念でしたね。


■余談

 このゲーム、キャラの関係性から必殺率が上がるという設定が存在しています。恋人同士なら隣接させるとお互いにステータスが上がるのですが、時々片方だけ強化されるパターンが存在します。

 ええ、です。その相手が恋人持ちだったら、その道ならぬ恋に何とも切ない気持ちになります。だからこそゲーム内の人間関係にプレイヤーは思いを馳せたのでしょうね。


■まとめ

 壮大な物語、練り込まれた設定と、ファンタジー好きなら是非ともプレイしていただきたい。そんなゲームと言えるでしょう。外伝、聖戦の系譜、トラキア776、そして覚醒という他の作品とも関連性のある作品なので、ファイアーエムブレムシリーズはやり始めたら止まらなくなります。

 こちらも4コマ劇場が刊行されていました。読み込んだなあ……。


 今回はこの辺で。

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