第2回 ドラゴンクエスト4~導かれし者たち~(FC,PS,DS)

 私がとにかく好きなのがDQ4~6の天空シリーズ。その第一作目となった4は長くプレイして来た作品でもあります。FC,PS,DS版すべて購入し、全てやり込みました。

 この作品の特徴は前作3とは真逆の「固定メンバー制」にあると言えます。2のサマルトリアの王子やムーンブルクの王女は仲間になる際に少しのドラマはありましたが、それ以降はあまり会話が存在せず、多くは自分たちのイメージに依る所がありました。

 4は第一章から五章まで違うメンバーが主役となり、それぞれのドラマと五章で集うまでなぜ世界のあちこちにいたのかの背景を描いてくれるため、生き生きと動く各キャラへの思い入れが非常に強くなりました。

 初めてこれをやった時は「勇者は?」「何で戦士からスタート?」と全く分かっていませんでしたが、時を経た今では違う物語を経たキャラそれぞれが一つの目的のために集結していくこの物語に見事に魅せられています。


■第一章「王宮の戦士たち」

 戦士のライアンは国内で発生していた子供の失踪事件の調査から物語がスタート。事件の背景がいつ生まれるかもしれない勇者の登場を恐れ、モンスターが子供を連れ去っていたと判明したことから、勇者を守るためにライアンは旅に出ることになります。

 実は昔、DQ3で戦士は金がかかり、鈍重であることから敬遠していました。ヒゲのおじさんキャラもそれほど好きではなかったのですが、このライアンはそんな私が最終メンバーの一人に使ったほど惚れ込みました。

 人間に憧れる仲間モンスター、ホイミンの存在。初めてシリーズ内でモンスターが仲間になると言う要素が入り、ライアンを助け、共に旅に出て遂には五章で人間になることができたという、「いったいどんな物語があったんだよ! そこを教えてくれ!」と言いたくなるようないわば想像を掻き立てる空白の時間が存在します。一番最初の章でありながら五章ではラストに仲間入りするライアン。その長い旅はどんなものだったのか。想像せずにはいられません。


■第二章「おてんば姫の冒険」

 おてんば姫のアリーナはエンドール城の武術大会に出場するためにサントハイム城を抜け出し、神官のクリフトと魔法使いのブライという二人のお目付け役を引き連れての冒険旅行へ。そして数々の冒険を超えてエンドールへ到達。しかし武術大会で戦うはずだった相手は行方をくらませ、故郷に戻ればそこはもぬけの殻。親を始めとしたサントハイムの人々の行方を追うためアリーナたちは旅へと出ます。

 PS版から仲間との会話が追加され、所々で会話が楽しめるようになりました。クリフトがアリーナに惚れている設定も4コマ劇場などではよく見られましたが、ここからほぼ公式化しましたね。

 二章内でもライアンと遭遇したりと、少しずつ各章がクロスするところが嬉しかったです。


■第三章「武器屋トルネコ」

 雇われ武器商人のトルネコが主人公。商人が主役、しかもクリアのために行うのは金稼ぎというかなり異色な章。DQ3で商人は全く使っていなかった私でしたが、とにかく金を稼ぐために突き抜けたシナリオだったこともあり、普通では稼がない数万ゴールド単位の金稼ぎを楽しめました。

 鉄の金庫を得るためのトラップを潜り抜け、幻覚を見せる狐を退治したり、戦争寸前の二国を行き来して戦争を止めたり、仕入れと売却による原価と売値、時価を見極めた上で利益を追い求めると言う経済感覚も勉強させてもらいました。

 個人的に残念なのが、トルネコの最強武器が「破邪の剣(攻撃力35)」から「奇跡の剣(攻撃力100)」と、中間がまるでないこと。三章で破邪の剣は手に入れることが可能ですが、五章ではメダル王から奇跡の剣を交換してもらうまで上位武器が無いと言う悲しさ。トリッキーな戦い方もするのでもっと楽しみたかったのですけどね。(PS版から装備が追加されて解消されました)


■第四章「モンバーバラの姉妹」

 踊り子のマーニャと占い師ミネアの姉妹が主役の父親の仇討ちストーリー。踊り子と言いながら魔法使い顔負けの強力な魔法をぶっ放す奔放な姉と真面目な僧侶タイプの妹という火と水とも言うべき対照的な姉妹という要素はとても印象に残りました。

 戦士タイプが後半で加わるNPC以外いないと言うかなり厄介な戦いを強いられるシナリオ。モンバーバラやハバリアのような明るい町とアッテムト、キングレオのような暗く不気味な雰囲気の場所の対比が強く、所々で対照的なものが出てきます。

 しかも驚くのが、こういうシナリオにはありがちな「敵討ちを成す」ことに失敗するという流れです。一応仇のバルザックは倒すのですが、相手はまだ生きている上、その上役キングレオが登場して負け確定のバトルに突入させられるという、これまでで初めての経験を味わいました。

 撤退中に仲間(オーリン)を失い、失意の内に船でその地域を後にする。何とも後味の悪さを味わいながら、船の行きついた先が二章、三章の舞台となったエンドールだったことが驚かされました。


■第五章「導かれし者たち」

 隠れ里で過ごしていた勇者。しかしその場所が魔物たちに見つかってしまい、いきなり村が全滅。幼馴染の犠牲によって辛くも生き残る勇者でしたが、どこへ行けばいいかもわからない状態からスタートと、「なんだこのクソ重いストーリーは」と言いたくなる序盤。BGM「勇者の故郷」があまりにも物悲しい雰囲気を作っています。

 その孤独を脱するのが最初の仲間。四章のマーニャ、ミネアと出会って旅が始まり、道中でトルネコと邂逅。アリーナ一行と出会い、最後にライアンと合流。第一章~第四章のシナリオの順と逆にメンバーが集結していきます。

 全員が集まったことでフィールドBGMも「馬車のテーマ」に変化。本当の旅がここから始まると言う感じがしました。


 3と違い、転職システムがない代わりに仲間が全員で8人(場合によってもう1人加わることもあります)。このメンバーを馬車を使って入れ替えながら戦いに臨機応変に対処すると言う試みはとても斬新でした(まあFC版ではAIのシステム的な事情でクリフトが通称ザキマシーンと言われる妙な挙動をすることになってしまいましたが)。PS版以降は全員に命令できるようになったため、自分で全員の行動を指定できるようになったのはありがたかったですね。


■勧善懲悪と行かない物語

 敵の首魁、デスピサロはこれまでのボスと違って人間を滅ぼす理由が明確に描かれているのが特徴です。仲間にもストーリーがあれば敵にもストーリーがある。DQ4はそんな作品でした。

 デスピサロが大ボスへと変貌していく原因は人間。元々はエルフのロザリーを守るために人間を滅ぼそうとしていましたが、人間によってロザリーが無惨な死を迎えたために身も心も怪物へと変貌してしまったという悲しい流れがあります。

 単に人間を魔王が滅ぼそうとしたという話ではなく、あちらにもあちらなりの想いが存在していたこともプレイヤーは知ることになります。デスピサロを討ち果たしたものの、しかし本当にこの戦いは自分たちが正義と定義していいのか。何とも言えない後味の悪さが残るのです。

 そしてエンディング。勇者は故郷のみんなの仇討ちを果たしました。しかし仲間はいずれも帰る場所があるけど自分には帰るべき故郷はない。既に廃墟と化した故郷の村で独り、花畑だった場所に横たわるだけ。この後の展開は議論を呼んでいますが、幸せな結末であればと思います。


■第六章

 FC版に存在せず、リメイク版で追加された第六章。ここもまた、賛否が分かれているところです。言ってしまえばDQ4を王道の勧善懲悪の物語へと向かわせる、大団円のための救済ストーリー。元々は容量の関係で削られたという話も聞きますが、どちらにしても私はこの物語は一つの答えとしてあって欲しかったものだと言えます。

 ロザリーが蘇り、ピサロが正気を取り戻し、共に真の黒幕との戦いへと向かっていくこの第六章。結局勇者の故郷は滅んだままというのが辛いところですが、勇者の手によって人間以外も救われるというライアンとホイミンが示した人と魔の共存(ホイミンは人間になっていますが)を勇者もまた体現したと言えます。


■まとめ

 この物語では異種族が共に生きるための手段をそれぞれが見つけようとしたようにも見えます。違う種族への憧れ。仇との共闘。単なる勧善懲悪の王道RPGではない、シナリオを重視した物語性に特化したのがDQ4ではないかと思います。ここからドラクエは更にシナリオが強力になっていきます。

 私の原点とも言えるドラクエ二作。個性を自分で考えた3、キャラクターの背景を描くことにより個性を生み出した4、いずれも名作であったと思います。


 今回はこの辺で。

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