名勝負

 この学校の体育祭は三学年の同じ数字の組による合同チームの対抗戦だった。ここまでの競技でポイントは三組と五組が優勝を争っている。そしてその勝敗は最後の競技の結果に託された。

 パンと乾いた音が鳴り響く。居並んだ五人の選手たちがその瞬間、強く地面を踏みしめ風になる。観客席から飛ぶ声援は走る選手に力を与えるが、一人、また一人と距離が開いてレースの勝者の座から脱落していく。

 やはりと言うべきか三組と五組の選手は一歩も譲らない。一年、二年の選手へとバトンが移ってもその差はほとんどない。その熾烈なレースは他の組も自チームへの応援を忘れてその結末を見届けようと視線を注ぐ。

 三年生の選手は長年の親友だった。学校にはそれを知る者も多い。ほぼ同時にバトンを受け取った二人は猛然と駆ける。友人だからこそ、仲間だからこそ一切手を抜かない。手加減をすること、花を持たせることこそ侮辱にあたる。だから確実な決着を目指す。

 クラスメイトも、教師も、保護者も固唾をのんで見守る中、片方がテープを先に切る。誰もが拍手を送った。勝負の決着よりも、名勝負への喝采がグラウンドを埋め尽くしていた。

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