ひまわり畑の白

 ある日、新聞に載っていた写真に私は目を奪われた。

 そこにあったのは遥か果てまで続く広大なひまわり畑。幼い頃、家族旅行の際に親とはぐれて迷い込んだ場所だった。

 十数年ぶりに見たその場所はあの頃と何も変わっていなくて、懐かしさにとらわれた私は次の連休にそこへ向かうことにした。

 あの頃は迷子になった寂しさから長い間記憶が眠ったままになっていたが、その場所に立つと当時の記憶がどんどん蘇って来る。

 一人ぼっちで泣いていた私を女の子が道路まで連れて行ってくれた覚えがある。あの優しい笑顔に私は泣くのをやめ、自信を持って手を引く心強さに安心したのだ。

 あの子は地元の人だろうか。それとも私と同じ旅行者だったのだろうか。幼い頃のことなのでどんな顔をしていたのか記憶が定かではない。でも私の手を引く少女の、太陽の光を反射して白く輝いていたワンピースの姿だけは記憶に残っている。

「観光の方ですか?」

「ええ、ここはちょっとした思い出の場所でして……」

 後ろから声をかけられ振り向く。その時はっきりと――少女の笑顔を私は思い出した。

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