最後の試合

「……以上がベンチ入りのメンバーだ」

 背番号入りのユニフォームが監督から最後に名前を呼ばれた選手に手渡された。

 ここまでに自分の名前は呼ばれていない。つまり最後の夏の大会に俺は出られないと言うことだ。最後まで抱いていたほのかな期待は現実の前で打ち砕かれた。

 実力で負けたならまだ諦めも付く。でも自分の場合は怪我が原因だ。競争のスタートにすら立てなかったのだ。一試合ならともかく夏のマウンドで毎日投げ続ければ確実に肘が壊れる。そんな診断を下されたエースが投げられるわけがない。わかっていても現実を突きつけられれば心が痛い。

「でも、明日がある」

 自分たち、選ばれたなかった三年生はレギュラー組との壮行試合の相手を務める。そのピッチャーとして選ばれたのは自分だ。

 高校生活三年の全部を込めて投げてやる。一イニングでも、一球でも多く投げて最高の引退試合に――レギュラー組にとっては最悪かもしれないが――してやる。


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