なめこは誤解の元

「人は、努力すればできないことはない」

 そう言う人がいるけどそれには異を唱えたい。

 どれだけ筋トレしたって人は空を飛べない。

「金持ちだけが住めるような高層ビルには部屋を持てないし、できないことはできないと日本人ははっきり言うべきだと思うのだよ僕は」

 俺の前にあるのはなめこ汁。俺はこの味噌汁だけは大嫌いなのだ。

「早く食べないと遅刻するよ……毎日これじゃおばさまも大変だね」」

 迎えに来た幼馴染がいつものやり取りにうんざりした表情を見せた。だが嫌いなものは嫌いだ。食べなくていいならそれに越したことはない。

「俺がなめこ嫌いだってわかってて出してくるからな……なあ、味噌汁だけお前が作ってくれないか?」

 なめこ憎さに俺は思わずそう口にしていた。だが幼馴染は何やら顔を赤くしていた。

「え、『毎日私の味噌汁食べたい?』って……そういう意味?」

「違えよ」

 何を曲解してるんだお前は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る