クラスの怪談

「深夜二時、教科書の偉人の写真が喋る」

 そんな噂がある日クラスでささやかれ始めた。

 怪談話は夏の風物詩だけどまさか自分の学校が噂の元になるなんて思ってもいなかった。私は平凡な日常に割って入って来た不思議な出来事に少しワクワクしていた。

 だけど「馬鹿馬鹿しい」と担任の先生に鼻で笑われた。あまりにも非科学的だと。

「そもそもそんな時間にどうやって学校に入るんだ?」

「あ」

 昔と違って今は夜に警備システムを作動させているので誰かがいたらすぐにわかる。教室に入ってお喋りの言葉を聞くことなんてできない。いたずらを仕掛けることも無理だ。

「なーんだ」

 噂は噂だったみたいだ。私はガッカリしながら教室に戻ることにした。


「……おい、気を付けろよ」

 私の後ろで先生が何かを言った。振り返ったけど先生はもう仕事に戻っていた。たぶん気のせいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る