白河夜船
「泥酔した父が保護された」と夜遅くに警察から連絡があった。
酒癖が悪いのに酒好きな父。暴力沙汰は起こさないのが唯一の救いとは言え、迷惑を被るのは私たち家族なのだからそろそろお酒を控えて欲しい。
悲しいかな、父のお陰で警察の人とはとっくに顔なじみだ。だが今回はいつものように引き取ってすぐ帰宅というわけではないらしい。担当の警官は神妙な面持ちで言った。
「実は今回、保護された状況が少々特殊な状況でして」
私は頭を抱える。いったい何をやったのか。ことと次第によっては、これ以後退勤時間になったらフライパンで殴って物置に閉じ込めるくらいの実力行使が必要なのではないだろうか。
「馬の背で寝ているところを保護されまして」
「……うま?」
あまりに非現実的な単語が出てきて頓狂な声が出てしまった。
なぜに馬?
どこの馬?
だれの馬?
「ところでお宅で馬の飼育とかは」
「してません」
「ですよねえ」と警官は頬をかく。
警察署の外から馬のいななく声が聞こえてきた。
私たちの困惑をよそに、父はベンチで幸せそうに夢を見ていた。
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