　「この夏、最大の感動を貴方に」という映画の売り文句に俺はいい加減飽き飽きていた。

　もうちょっと捻りの利いたキャッチコピーはないものだろうかと常日頃から思っていたそんなある日、「あなたもかかる。扇風機の魔法」という謎めいたキャッチコピーを目にした。

　なんだこれと思いながらも、それを目にした日から頭の片隅にずっと引っかかっていて忘れられない。Ｂ級映画の匂いはプンプンするのだが意を決して観に行くことにした。

　ストーリーは普通の少年が夏休み限定で魔法使いとして活躍する話だった。季節感を出すためか持っていたのは魔法の杖ならぬ魔法の扇風機。それで風を起こして町で発生するトラブルから人々を助けていた。

　馬鹿馬鹿しい設定だったが物語自体はツボを押さえており、どんどん引き込まれていく。

　そして訪れたクライマックス。夏休み最後の日に直撃した大型台風からみんなを守るために主人公は変身する。鉄球すら吹き飛ばす勢いの暴風を相手に苦戦する主人公だったがその時、日本中の扇風機が起動して一つの風になり、台風を吹き散らした。

　意外と当たりの映画だった。あまりの興奮に熱くなってしまった。

　さて、帰りに扇風機を買って行くか。

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