共犯者のジュース
僕は昔から、飛行機が高度を下げる時のあのふわっとした感覚が大嫌いだった。
墜落しないことがわかっている。でもあの突然空に放り出されたような気持ちの悪さが何よりも苦手で、できれば一生味わいたくはないとまで思ってる。でも現実は残酷だ。田舎のお爺ちゃんの所へ行くには飛行機を使わなくちゃいけない。だってその方が早いから。
でも今年は違った。そんな僕の飛行機嫌いに気を使ってくれたお父さんが田舎まで電車で行こうと提案してくれた。お母さんと弟は先に飛行機で出発して、僕とお父さんは電車で出発。男二人だけの大冒険が始まった。
電車を乗り継いでいくと、街並みに緑が増えて行くのが見えた。まだまだ暑いのでお父さんがジュースを買ってくれた。いつもはお母さんが虫歯になるからと買ってくれない炭酸のジュースを二人で飲む。「ここだけの話だぞ」と実はお父さんもこのジュースが昔から好きで、たまに外で隠れて飲んでいると教えてくれた。
旅を始めてちょうど二十個目のトンネルを抜けると何度も見た田舎の光景が広がってきた。いよいよ二人の冒険も終わりかと寂しくなってくる。
電車のドアが開いて空気が流れ込んできた。残暑が厳しい東京と違って、とても涼しい空気が僕に「いらっしゃい」と優しく歓迎してくれているようだった。
いい思い出がちょっと増えた夏休みだった。
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