雨止みのノスタルジア
幼い頃に住んでいた村を訪れた。
かつて住んでいた家は取り壊され、知り合いも全員村を出てしまい、あの頃を懐かしむことのできるものはどこにもない。せっかくの故郷なのにどこか知らない場所に取り残されたような孤独さを感じた。
通った小学校も既に廃校になっていた。時間はちょうど十五時を回っていた。あの頃と同じ時間にかつて歩いた通学路を私は歩くことにした。
するとその途中で夕立に遭った。私は近くに神社があったことを思い出し、そこで雨宿りをすることにした。
石段を上った私は息を切らせていた。誰が先に賽銭箱にたどり着くか競争していたあの頃の体力と、今の自分を比べて苦笑した。
夕立が止むのをじっと待つ。雨水が滴り落ちる社のひさしの下から見えるのは昔と変わらない境内の静かな光景。多くのものが変わってしまった中で、ここだけが昔のままだった。
私はしばらくそこで時を過ごした。人のいない穏やかな空気の中で、雨音だけが響いていた。
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