初恋ハーフタイム
一、二、三……僕はリズムよく腿を上げてボールを打ち上げる。最初は片足だけだったリフティングも慣れてきて両足で交互にできるようになって来た。
「あっ!」
安心した拍子にポイントがずれた。とんでもない方向へ飛んで行ったボールはアスファルトに転々とバウンドしていった。
数を数えながらボールの行く先を目で追って、タイミングを合わせて足を出して力加減をしてボールを打ち上げる。いろんなことを一度に実行するのでリフティングは簡単そうに見えて難しい。
「あとちょっと」
もう少しだけ続けよう。大変だけど続けなくちゃいけない。もちろん上手くなりたい気持ちはあるけど、もう一つの理由がある。
「こんにちは。今日もお疲れ様です」
今日もその時間が来た。向かいの家の女の子が帰ってくる時間だ。
「こんにちは」
「練習はいいの?」
「ちょっと休憩」
練習を止めて笑顔で挨拶を返す僕に女の子は首をかしげる。間違いなくこの子がくるまで僕は練習をしていた。だから休憩に入るのには何の問題もない。
「毎日練習してて偉いね」
「まだまだ下手だけどね」
「頑張って。応援してるよ」
「ありがとう」
手を振って家の中に入っていく女の子を見送った僕は、またボールを蹴り始める。ほんの少しだけど、学校も違うあの子と話が出来る大切な時間。
「早く上手くなるんだ」
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