25.矛先
「クローディア様、また一位でしたね!すごいです!」
教室に戻ると、アヤリナ様に声をかけられた。
「私は相変わらず真ん中あたりで…。頑張ってはいるんですけど結果がついてこなくて」
アヤリナ様は思い通りの結果では無かったのか、しょんぼりと落ち込んでそう言った。
「大丈夫ですよ、アヤリナ様。継続していればいつか必ず報われます」
「私魔法が苦手で、いつも実技で落としちゃうんです。クローディア様の魔法はいつも凄いですね。コツとかあるんですか?」
コツ…
「そうですね、わたくしはイメージを大切にしています。どんな風に、どんな形にするかなど具体的に考えるとうまく行きやすいと思います」
「イメージ、ですか?」
「はい。例えば火の玉を出すとします。その時に、火の玉、と漠然と浮かべるのではなく、10センチほどの火の玉、とイメージするのです。そうすることで魔力のコントロールもしやすくなりますよ」
「なるほど!確かにそうです。私いつも大雑把に魔法のイメージをしていましたが、具体的にイメージすればいいんですね!」
アヤリナ様は、今度のテストでやってみます!と元気よく言った。
最近は精神的にだいぶやられていたため、彼女の太陽のような笑顔は自然と穏やかな心境にしてくれる。」
「ところでアヤリナ様、殿下を見かけませんでしたか?」
「ジルベルト殿下ですか?おそらく教室にいらっしゃると思いますけど…」
「そうですか、ありがとうございます」
特に用はないのだが、最近よく一緒にいたためなんとなく一緒にいるのが当たり前になっていたためつい聞いてしまった。
ーーー教室。
自然と足がジルベルトの教室に向かう。
その時、後ろからグイッと肩を掴まれた。
その勢いで後ろを振り返る。
「…どこに行こうとしてるの。まさかジルベルト殿下の教室じゃないでしょうね」
クローディアの体が強張る。治りかけの頬の傷がズキンと痛んだ気がした。
「ジュリア様…」
「満点で一位をとって褒めて欲しいの?強欲もいいところよ」
そんなことをして欲しいなんて思っていない。ただ純粋な気まぐれだった。
「わたくしは殿下に会いに行くなんて一言もいっておりません。他クラスに行ってはいけない決まりがあるんですか?」
わたくしがそう言った瞬間、明らかにジュリア様は声のトーンを落した。
「来なさい」
「…っ離してください!」
無理やり腕を掴まれて連れていかれる。ジュリア様の取り巻き達の力は思ったよりもはるかに強く、クローディア1人の力では到底振りほどくことはできなかった。抵抗できないままズルズルと大きな噴水の近くまで連れていかれる。大きな像が立っている噴水は後ろに人がいても気づくことはないだろう。
ジリジリと噴水の縁に追い込まれる。
「…あなたが悪いのよ。クローディア様。あなたが私より優れているから。あなたが私の全てを奪ったから」
「あなたの…全て?」
「ええ。社交界一の美人の座も、成績も、ジルベルト殿下の婚約者の座も!本当は全部、私のものなのに!あなたさえいなければ全てうまく行くのよ!」
ジュリアの取り巻き達は彼女のただならない様子に驚く。彼女達がクローディアに嫌がらせをしていたのは、ジルベルトの婚約者に対する単純な嫉妬心からで。やりたくてもやれないことを堂々とやるジュリアの後ろでいたずら感覚でしていた。
彼女達もまさかジュリアがそこまでの憎しみと恨みを持っているなんて想像していなかった。
「あなたは殿下のことが好きなのですか?」
「バカにしてるの?私はあなたよりもずっと、ジルベルト殿下のことを好いているわ。殿下も愛想笑い一つもできないあなたなんかより私と結婚したほうが幸せに決まってる」
何も言い返せなかった。わたくしは殿下のことを好いてはいないし、愛想笑いもできない。この先アイシャ様と結婚されるくらいならジュリア様の方がいいかもしれない。
そんなことを考えていた時、両肩に強い衝撃とともに視界が大きく揺らいだ。
ーーーえ。
「ということで、あなたには死んでいただきます」
理性を失った瞳でそういうジュリア様の顔が見えた時、背中に衝撃を受け水中に投げ出された。
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