24.テスト結果/小話 ジュリア・デニス
テストから数日後、学園の掲示板の前は大勢の生徒たちでごった返していた。
しばらくして数人の教師が来て、掲示板に大きな紙を貼り付けると、生徒たちは一斉に掲示板に向かい押して押されてを繰り返しながら我先にと紙に目を向ける。
喜ぶ者、落ち込む者など様々だ。
クローディアはその様子を遠くから見て、人がいなくなるのを待ってから見にいく。前世ならともかく、どうせ死ぬ今世、将来に関わるテストの将来なんてないのだから結果に興味はない。ゆっくりと紙に目を向け、上から名前を見ていく。
1位 クローディア・フィオレローズ 700点
2位 ジルベルト・ルーン・サードニクス 685点
3位 アラン・ヘリオドール 662点
4位 ジュリア・デニス 623点
…以下続く
自分は満点で1位。
そのほかの結果も概ね予想通りだった。殿下は685点。この学園の超鬼畜なテストの中ではかなりの高得点だ。殿下とともにわたくしと一緒に勉強したアラン様も前回よりも点を伸ばしている。
今回のテストはいつものテストよりもさらにレベルが高かったが、きっと筆記は満点なのだろう。
実技は採点する教師の好みや価値観が大きく関わるため、実力があっても評価がイマイチなことは少なくはない。クローディアは基本教師よりも高レベルな魔法を使えるため、好み云々以前に満点をつけざるを得ないため満点だ。
授業の小テスト規模のテストは教師が一人のため自分本位な採点が可能だが、定期テストは三人の教師が共同で採点を行う。教師全員がクローディアを妬んではいないし、まともな教師もいるためちゃんとした採点になるのだ。
とりあえずテストを乗り切れたことに安堵の息を吐きつつ、今後のことについて真剣に考えることにした。
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小話 ジュリア・デニス
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ーーなんで。なんであの女が一位なの!
ジュリアは一人拳を強く握った。
ジュリアはそこそこ力のある家に生まれた。小さな頃から蝶よ花よと育てられ、初めて王太子様にあった時、一目惚れをした。自分が王太子様の婚約者になると信じていた。
『あなたより王太子殿下にふさわしい令嬢はいないわ』
ーーーそうよね、お母様。
『なんて美しいんだ、お前なら立派に王妃となれるだろう』
ーーーそうよね、お父様。
自分は誰よりも優れていて美しいのよ。王太子様の婚約者は私。
幼いながらもそう言われ続けて、そのとおりに所作も教養も勉強も頑張った。
でも。
ある日両親がひどく落ち込んでいた。
両親から発せられた言葉は私にとって、数日もの間寝込むほどに衝撃的だった。
『フィオレローズ公爵家の令嬢が婚約者になった』
ーーー何よ、私じゃなかったの?
ーーー皆私こそふさわしいって…
こんなの何かの間違いだ。公爵家だからって優遇されただけよ。私の教養と美しさを見たらきっと私と婚約するに決まってるわ。
婚約発表のパーティで王太子に見初められるために、全力で着飾った。屋敷の皆も、会場の皆も誰もが私に美しい、と言った。
ーーーやっぱり。私は誰よりも美しいのよ!
揺らぎかけた自分の美しさに対する自信は皆の言葉で元に戻った。
[王太子殿下とクローディア嬢の入場!]
私は意気揚々として振り返った。
そして絶望の底に突き落とされた。
目を疑うほどの美しさだった。まるでこの世のものではないと思えるほどだった。
自分をはるかに上回る上品な所作だった。
非の打ち所のない、完璧な少女がそこにいた。
私を美しい、と言っていた人たちはすぐに離れて彼女の元へ行き、ポツンと一人取り残された。
太刀打ちなんてできなかった。勝敗なんて明らかだった。
その日からあの子に勝つために血の滲むような努力をした。毎日毎日毎日毎日。
その度にボロボロに負けた。圧倒的な差だった。
何度も何度も繰り返してるうちに別の感情が湧いてきた。
ーーー私は美しいのよ。あの子がいない限り私が一番!
幸い王太子様はあの子にさほど興味を持っていなかった。私こそふさわしい。私こそ。
なのにいつの間にか王太子様はあの子と親しくし始めた。
王太子様があの子のことを好きなことは誰が見ても明らかだった。なのにあの子は。あの女は喜びもしなかった。あの無表情を見ていると腹が立ってしょうがなかった。
邪魔なあの女さえいなくなればいいのよ。それで全て解決だわ。王太子様は私の魅力に気づいてくれるはずよ。
ーーー私は誰よりも美しいんだから。
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