幼少期

プロローグ

 スキルレベルの最大値は5で、それ以上のレベルには生まれ落ちた時にしか至る事が出来ないらしい。何が言いたいのかと言うと……、


「私、ミーちゃん!勇者で魔物特攻Ⅹを持ってるの!!」

「へ、へぇ……」


 金髪の長い髪を揺らしながら、ハキハキと元気よく喋る美幼女。この世界に生まれ落ちてから5年経った今、初めて【表情制御Ⅴ】──今は【表情制御Ⅳ】だが──の効果が遺憾なく発揮された。


「ごめんねミーちゃん、うちの子あまり喋るのが得意じゃないのよ」

「うん、いいの!私が得意にしてあげるから!」

「……」


 何処にでもある辺境の地の、その又何処にでもある辺境の村。そこが俺の生まれた土地だった。人口は100人足らず、ほぼ自給自足の生活を送る、貧しくもなく裕福でもない村の何処にでもいる子供の一人、それが俺の立場だった。少し他と違う事があるとすれば、ずっと家に閉じこもり、友達が一人もいない事ぐらいだろうか。


「ルーくん!いくよ!」

「え、ちょまっ」


 自分でミーちゃんと名乗った美幼女に手を引かれ、家から外へと転がり出る。俺に友達がいないのは小さな子どもにどう接すれば良いのか分からないという大きな理由があるのだが……そんな事知ったこと無いとでも言わんばかりの満面の笑みを浮かべ、俺をミーちゃんに何度目か分からない【表情制御Ⅴ】を体感しながら……、


「ちょ、死ぬ!」

「大丈夫!」


 ……引きずられていく。


 ちょっと言い訳をさせてほしい。

この世界に存在するステータス。搦手などがある為それが全てだとは言わないが、真っ向勝負をすれば高い方が必ず勝つ。何が言いたいのかと言うと……HP、MP、STR、VIT、AGI、INT、MND、DEX、すべての数値において人類最高値を叩き出す"勇者"に叶う訳が無いのだ。ましてや、俺のステータスは諸事情で全てにおいて本来の10%程度しか無いから勝てるわけが無い。


「ルーくんも何なのか、イーちゃんに見てもらおーね!」

「わ、分かったから引きずらないで……」

「大丈夫!!」


 何が!?


 呑気に引きずられていたからか、美幼女の意味の分からない自信に呆気に取られた時とほぼ同時に、通信係から来た問題のある連絡。



 ……もう少しこの子のセリフの意味を考えるべきだった。

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