大戦の終焉

(まずは隙を作る)




 コペルはバリアの中におり、バリアを減衰させてもコペルがバリアの力を補完する。

 一見、抜け目無いように見える。

 敵にもそのように見えるだろう。

 だが、神が絶対であり、突破出来ないというその慢心して何もせず、何も考えもせずに悠々と構えているのが命取りだ。


 勝負は一瞬だ。

 全てはその一瞬で決まるだろう。

 その為にはまずは布石を準備しないとならない。

 

 アリシアはBOX内の”生成”方式を変更して、特殊弾頭に切り替え、さっきと同じようにM2マシンガンを放つ。

 さっきよりも1発辺りの威力を落とし……とにかく、連射する。

 豪雨のような銃声が鳴り響き、弾丸が無情にもバリアに阻まれ、弾丸がその場に落ち、散り積もっていく。

 積もり弾丸の鉄筋の音色の如く、夜の闇に鳴り響く。

 何を狙っているか分からず、首を傾げるコペルを他所に”アマテラス50式”はホーミングレーザーとロケット砲をこちらに向ける。


 流石に人間の意志を組み込んだ因果頭脳だけあり、学習能力は高いようだ。

 アリシアが上空に回避した時、爆風は微かに被弾、ホーミングレーザーが右脚部を掠めた。

 ”アマテラス50式”は動くアリシアを追撃しようと機体をゆっくりと動かし、全身する。

 ここで動かれると少し困る。




「そこを動くな!アース・ハンド!」




 アリシアはネクシル・アベルのシステムで強化、セットオブジェクトの能力により、強化された”鉱物操作術”で地中鉱物を集め、”アマテラス50式”を左右と前後を手のように挟み込む。

 それでも”アマテラス50式”は前進しようとするが、バリアと干渉して金切音を立て、動きが鈍くなり、ほぼその場に止まっている。


 ”アマテラス50式”は動く事を諦めて固定砲台となり、推進機構のエネルギーを攻撃に回し、再びホーミングレーザーを放つ。

 だが、エネルギーを確保したお陰かホーミングレーザーの数が増え、空中で右斜め上に避けるが、その内の何発かが更に追撃してきたので高度は左斜め下に避け、両腕のM2マシンガンを連射する。

 相変わらず、敵のバリアに弾かれ、弾丸が辺りに散乱する。

 その度に減衰したエネルギーをコペルが補完する。




「神の破壊は絶対である」




 そう様に詠唱した瞬間、放たれたホーミングレーザーが黒い炎を帯び迫る。

 だが、どの道、当たらねば意味のない攻撃だ。

 アリシアがこの程度も避けられないと思っているほど侮っているのだろうか?と不審に思いながら、追尾するレーザーを右に1回避け、更に追尾してきたレーザーを下に避けながら、追尾するレーザーをよく観察する。

 すると、レーザーが僅かに膨張するのが見えた。




(まさか!)




 長年の危機管理能力だろうか最早脊髄反射的に下へ加速、慣性を無視して停止せず、地面を滑走、距離を取る。

 すると、炎が急激に膨張、一気に炸裂した。

 それは最早、戦術核弾頭とも言えるような威力で激しい爆炎と爆風が辺りを包み、その衝撃波は王都のガラス張りのステンドグラスを全て砕き、頭上から落下、怪我をする者まで現れた。

 黒炎が大地を抉り、漆黒の太陽が平野を照らす。

 アリシアは初弾を回避したが、コペルと”アマテラス50式”は環境被害などお構いなしにさっきと同じホーミングレーザーを連射する。




(距離を取らないとならないか……)




 計画完遂の為に”アマテラス50式”に近い位置で戦闘をするわけにはいかない。

 アリシアは一度、後方に下がり距離を取りながら、M2マシンガンを連射する。

 バリアの阻まれる度に落ちていく弾が山のように積み上がり、弾丸の金属音が調律を奏でる。

 だが、それを追撃するようにホーミングレーザーが再び放たれ、爆音を立てながら追尾する。

 アベルの加速と速度で爆破圏外になんとか逃げ切るが、光の速度であるホーミングレーザーの方が速い。




「あと、少し……」




 M2マシンガンから放たれる弾が連射速度が更に加速させる。

 後、少しで目標数値に達する。

 そして、ようやく上限に達した時敵が奥の手を見せる。

 対象を捕捉しながら、ホーミングレーザーをあらぬ方向に発射して左右前後……そして、上から挟む形で黒炎を爆破する。

 それもさっきとは比較にならない爆音を立てながらネクシル・アベルが炎に包まれる。

 激しい爆音は地を砕き、草原の草木を焦がし、大地が燃え盛る。

 爆炎が晴れるとその中央には右腕が破損、跪くネクシル・アベルの姿があった。




「どうやら、ここまでようだな。汝の機械人形は満足に動けない。汝に勝ち目はない。最後に言い残す事はあるか?」




 ”アマテラス50式”とコペルはアリシアの息の根を止めようとこちらにロケット砲を向ける。




「そうだね。わたしの機体はもう動かないから機体が無いと雑魚だから、そう思い込んでまんまとわたしの術中に嵌ってくれた。深く感謝しますよ!」




 その瞬間、アリシアはあるを発動させると同時にその罠の影響でコペルの顔が険しくなる。

 隙が……出来た。




「アサルト!」




 それと同時にアリシアは”アサルト”で跳躍、アマテラスのバリア内部に転移、コペルの背後に回り込み、左手から召喚された”ロンギヌスの剣”をコペルに突き刺した。

 コペルは胴体に刺さった剣を呆然と眺めながら無機質に答えた。




「無駄だ。我には剣は……」




 その瞬間、彼の中で体が揺れる感触が奔る。

 次の瞬間、コペルの体内の中からコペルが食われていくのをコペルは感じ始めた。

 こちらを振り向きながら目が瞠目する。




「何を……した……」


「ネタばらしでも良いですが、その前に」




 アリシアは”空間収納”から左手にPGM ヘカートIIアンチマテリアルライフルを装備、”アマテラス50式”の因果頭脳のある中心部に狙いをつける。

 アマテラスの武装ではここまで接近された敵に攻撃する手段はないので後は撃ち抜くだけだ。




「無駄、だ……汝の武器ではラナンの守りは貫けない……」


「だと、思っているの?」




 そして、アリシアはPGM ヘカートIIアンチマテリアルライフルのバレルの延長線上に黒炎を発生させた。

 それは紛れもない破壊神ガンバインの司る”神破壊術”による破壊の力を帯びた炎だった。




「ば、馬鹿な……どうして?」


「お前達神などわたしの道具に過ぎないと言う事よ」




 アリシアはPGM ヘカートIIアンチマテリアルライフルの出力を最大まで高め、中心部に向けて放った。

 守護の守りを受けた”アマテラス50式”の装甲は破壊の秩序の神に力で紙のように引き裂かれ、弾丸が因果頭脳を破壊、動力部を貫通した。

 それで機能を止めた”アマテラス50式”は地面に落下、その反動でコペルが地面に叩き落される。

 アリシアもネクシル・アベルを着地され、コックピットから降り、コペルに歩み寄る。

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