大戦3
どこかで見た事があると言うそんな懐古的な感傷に浸っているといつもの間にか消えていたラナン(?)が巨大兵器の頭上に現れた。
「随分、酷いじゃない。仮にも仲間に何もせずに今まで徹底していたなんて、それでも神なの?それとも神を僭称しているだけ?」
アリシアは柄にもなく神を煽ってみる。
高慢な人間とは、煽ればどこかで簡単に本性が出るからだ。
どれだけ理知な者でも高慢ならずっと積み重ねれば、そこに漬け込む事ができるからだ。
「仲間とは思っていない。我は秩序。あの者達は我らの道具に過ぎん。それに与えるべき力を与えた。我らが必要以上に関知する必要はない」
聴こえたのはラナンとは思えない喉太声の男の声だった。
主語も”我”に変わっている辺り別人と見るべきだろう。
「あなた、ラナンではありませんね」
「我はコペル。補完神コペルである」
「補完神?」
「神の秩序、力が失われた際にその補完をする神。それが我である」
(なるほど、だからラナンの力を補完、代行しているのか……)
ラナンの秩序は消え、謎の男がその秩序を補った。
それで世界は崩壊せず、均衡を保っているのだろうが、秩序神はそうとは思わず、寧ろ、均衡が崩れていると判断した。
そこでラナンの補填としてコペルを遣わしたそんなところだろう。
「アリシア・ズィーガーランド。汝はこの世に不要であり、危険な存在、害悪である。故に汝に裁きを下す。異界持ち込まれたこのアマテラス50式と我の力で汝を滅ぼす!」
そう言ってコペルは”アマテラス50式”に両手を付き、複数の魔術をかけた。
あのAP部隊にかけたラナンの”守護魔術”よりも遥かに高度な術をかけたように見えた。
尤もさっきより強いだけでコペルの”守護魔術”はラナンには及ばない。
何故?と言う疑問があったが、その答えはすぐに分かった。
今度はリバインから微かに流れていたガンバインの力を行使して”アマテラス50式”に力を付与した。
どうやら、力が消えた神の力を全て行使出来るのだろう。
その力もラナン半分のガンバイン半分と言った感じだ。
神としてのスペックにはそれほど大差が無い為、コペル自身は2つの力を行使出来ても自身のリソースをその分、それぞれの力に分割しないとならないようだ。
だが、ラナンの防御にガンバインの破壊、単純な強化だけに非常に強力だ。
加えて、あの”アマテラス”に関する情報は微かだが、記憶にある。
周囲には神力に干渉して、神術や魔術を打ち消すフィールドと強固なバリア機能がついていた筈なので碌な魔術が現状使えないだろう。
更に確かな優秀の因果を持つ者を兵器化していた気がするが、そうであっても倒すしかない。
炉心の熱源反応を見る限り、さっきの威力の主砲を何度も撃てるとは思えない。
さっきの一撃は王都の人間を皆殺しにする為に王都を滅ぼす火力で撃ったのだろう。
それにより現在、大幅に炉心出力が低下し敵も今の一撃を防がれるとは思っていなかった事から一時的に切り札を失った状態に等しい。
これはチャンスだ。
敵の炉心反応を見る限り、後10分以内に倒せば、さっきの高出力レーザーを撃たれる事はない。
ただ、破壊神の力を加えた事を加算すると残された時間は5分だ。
それまでは”アマテラス50式”は本来の力を出せない。
なら、ここが正念場だ。
ここで一気に敵の”アマテラス50式”を沈める。
アリシアは神術が殆ど使えない事を想定して神術に完全に依存しない非魔術戦を主体にした戦術を行え、術の妨害下でも安定して発動できる術で構成された”汎用戦術コンバット9”をセットして”空間収納”から火力の高いと比較的に連射性能が高いM2マシンガンを2丁を両腰で保持、手で支えて構え、左右マウントハンガーには弾帯BOXが展開された。
ちなみにこのBOX内では”生成”により弾丸が創造されているので弾切れの心配は無い。。
アリシアは因果頭脳の気配を感じ取る。
アマテラスと言う名前を聞いて恐らく、それがあると睨んだからだ。
人を兵器化して頭脳を構成しても人の気配は残る。
微かに流れる好戦的な自分を人類を超越した存在と愉悦する男の下品な笑いが聴こえた。
これが助けを求める女の子ならまだ、良心が呵責したが、こんな男なら慈悲はない。それにこの男からは外道のような腐り切った腐敗臭のようなモノがして不快感すら抱く。
目標は機体の中央部……一番防護が厚く一番硬い場所だ。
なら、ほかの場所には構わず、そこを一点を狙い貫通させる。
コペルは手の先から黒炎を纏わせる。
恐らく、破壊神の力だ。
そして、”アマテラス50式”からホーミングレーザーが放たれたと同時に開戦した。
”アマテラス50式”は一撃をアリシアは地面を滑走、左に逸れ、初弾を避ける。
そこに更にコペルが”アマテラス50式”の中から棒立ちのままで黒炎を纏った”ファイア・ジャベリン”を連射する。
中級魔術で連射性の良い魔術だ。
破壊の黒炎を付与させれば、かなり有効だ。
だが、当たらねば意味のない話だ。
黒炎が凄まじい爆炎を立てて激しい爆風をあげるが、アリシアはそれを今度は右側に避け、M2マシンガンで狙いを定め、1点に狙いをつけて放つ。
並みのAPなら反動で腕が引き千切れるが、ネクシル・アベルという機体はアリシアの身体能力をそのまま写す。
アリシアなら大口径対物ライフルを片手で撃てる。
加えて、機体への反動も”慣性操作”を応用すれば、ほぼ無反動で撃てる。
アリシアはM2マシンガンを軽やかに扱い、中央部に向けて弾丸を放つ。
リズミカルな薬莢の奏でるが戦場に戦曲を奏で2丁のM2マシンガンが敵のバリアに直撃する。
だが、未だ貫通はしていないが効いてはいるようだ。
初段よりもバリアの局所出力が上がっている。
これはこちらの狙いに気づき、局所展開しないと防げないと感じているからだ。
このまま狙えば、エネルギーが枯渇、主砲を撃てなく可能性もあると考えたが、現実はそんなに甘くはないようだ。
「コペルの補完は絶対である」
それが発動の鍵だったように今の一撃で失われたエネルギーが炉心反応を見る限り、回復したようだ。
恐らく、補完神としての力で失われたモノを補完する。
そうなると失われた力は再生を繰り返すと言う事になる。
「絶望するが良い、悪魔よ。汝に勝ち目はない」
(だと、思っているのかな?)
「驕るな下郎。その程度で絶望するとでも思っているのか?況して、出来損ないの神の戯言なんて聴くに堪えないわ」
昔の自分と比べたら今の自分はかなり辛辣で人当たりが厳しく、厳格さを増している気がする。
ただ、それで良いとも思えた。
何せ、無知な神や人間には断言して言わないと理解出来ないのだから……
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