極大魔術
「そう簡単にやらせはしない!マグマ・バレット!」
今、この場でオートマグⅦハンドガンの銃口に”神火炎術”を応用、弾丸と併用して周囲のマグマを搔き集め、形成したマグマの弾丸でドラゴンの目を狙う。
”神火炎術”は炎や熱量の”事象再現”や構築、並びに操作を司る事象を扱う術だ。
”神火炎術”と言ってもそこから様々な派生を行い、役割を絞り、術を安定させる事がある。
”神火炎術”の派生としては”熱操作”や”熱放出”、”原子活性”などがある。
これらは炎や熱と言うファクターで括られた術であり、熱と言う要素がある。
”神火炎術”を上手く扱えば術の安定性こそないが、それらの術を臨機応変に汎用的に扱う事ができ、それらの派生的な分派系の神術の会得をかなり容易にする。
即興で身に着ける事も可能だ。
熱要素があるなら、マグマは”原子活性”が活性した溶けた岩であると解釈できるのでマグマであろうと”熱操作”で熱を移動させる事でそのベクトル移動作用で発射、投擲に使えるのではないかと考え、マグマの弾丸を形成、”原子活性”を一瞬だけ活発化させ、マグマの中から投げつけるように即興的に2匹の片目目掛けて投げつけた。
”マグマ・バレット”は雄の左目と雌の右目に直撃、2匹の目が焼き爛れ、断末魔が空気を振動させる。
敵は”火炎魔術”が使えるので、臨機応変に”物理火炎耐性”が使えると思っていたが、どうやら、そこまで”火炎魔術”を使い熟している訳ではないらしい。
今ので分かったのは純粋な神術や魔術で放った攻撃(魔術火炎)は”術耐性”で弾かれるが、神術や魔術を用いない炎(魔術を一切使わない炎、アルコールランプの炎や爆発、火炎放射器の火炎等を”物理火炎”と呼ぶ)や熱等の神術や魔術の様な”事象再現”や構築に関与しない炎や熱に対しては比較的弱いと言う事が分かった。
今のマグマの攻撃には半分程度神術が籠められ、残り半分はマグマ本来が持つ物理的な熱量である”物理火炎”だった。
マグマを操作する上で神術を使って原子を活発化して飛び上がらせて飛ばして激突と共にその活発化現象は消えたが、マグマ本来の持つ熱量は確実に2匹の目を焼いたと言う訳だ。
ここからこの2匹は魔術的な炎に対する耐性は確かにあるが、物理的な炎に対する耐性は比較的に低い。
その場合、弱点となり易い目などが急所になると分かった。
2匹は怒りの形相でアリシアを見つめ、激昂、挟撃して突進を仕掛ける。
アリシアも即座に戦術を変えるように”来の蒼陽”を腰の右の鞘に納め、オートマグⅦハンドガンを”空間収納”に戻し、Oden30アサルトライフルと言う50口径アサルトライフルを装備した。
「甘い!喰らえ!フェイク・カバー!マグマ・ジャベリン!」
アリシアはSTs-130弾(12.7×55mm弾)を対魔物用弾として改造したSTs-130:
同じような技を何度も喰らうとは思っていない。
だが、敵の視力は悪く、神力による”神力察知”に依存してこちらを捕捉している事実は変わりない。
だから、今度は”マグマ・ジャベリン”を察知されない様に”神力放出”の派生である”神力偽装”と言う神術の技である”フェイク・カバー”と言う技を”マグマ・ジャベリン”に付与、神力の存在を探知し難くした。
これで彼等には目には見えない攻撃が迫っているようで回避すら真面にできない。
結果は功を奏し”マグマ・ジャベリン”は雌の右目を抉り、内部にまでマグマが流れ込み雌の竜は焼けるような熱さに悶えながら悲鳴をあげる。
いくらブレスを吐くドラゴンでも内部の焼かれるのは流石に堪えるらしい。
このまま内部でマグマが固まり窒息でもしてくくれば良かったのだが、雌はその場に止まり、高温のブレスを吐きながらマグマが冷え固まるのを抑えながら、体内のマグマを口から吐き出した。
流石に知能が高いだけあり、窒息のリスクは考えているようだ。
だが、今の一撃は流石に効いたようで雌は弱り果て、動きが鈍り、脚の動きも鈍くなった。
「まずはお前の首から……」
だが、雄のドラゴンはその狙いに気づき、こちらに注意を向けようとブレスを吐くのをやめ、マグマ溜まりの中を猛スピードで突進してくる。
「シンク・ホール!」
地竜のスクリプトを何度も覗いて会得した”鉱物操作術”によりダークネスドラゴンの足元に突如、巨大な穴が現れ、雪崩れ込む溶岩と共にドラゴンの上半身が頭から入っていく。
ダークネスドラゴンはそれを翼を羽ばたかせ、姿勢を取ろうとする。
戦闘機動で使わなかったところを見ると恐らく、あの翼は移動用の翼と見るべきだろう。
”力場操作術”の応用でより、ヒッグス場を操作した作用による”軽量化”の神術があるので実際の見た目よりも軽いだろうが、全長1000mの巨体となれば軽量化しても翼を用いても移動が限界なのだろう。
上空から攻撃するくらいの頭脳はあるはずなのにそれをしないなら戦闘できる程の力はないと見るべきだ。
それはつまり、翼にはそれほどの揚力を生み出せないと言う事でもあり、すぐには姿勢を戻せない。
なら、更に畳み掛ける。
「マグマ・バレット!バキューム・バレット!」
Oden30
翼にも耐熱性があるようでそれほどのダメージはない。
だが、狙いはそれではない。
”流体操作術”の中でも風を操る事に特化させ、空力を利用した戦術を取るストーム・イーグルのスクリプトを覗いて得た神術で溶岩周りを真空にして一気に冷却する。
溶岩が一気に岩石に変わり、翼や目の周りのマグマが零れ落ちず、重りに変わった事で雄のドラゴン姿勢が崩れ、頭から”シンク・ホール”に落ちていく。
「そのまま焼かれろ」
その後、”鉱物操作術”を応用して、マグマ溜まりを全て”シンク・ホール”に流れ込むように地形を窪ませ、マグマを穴に流し込む。
無論、ドラゴンの外皮的にマグマの熱等殆ど意味を為さないが、目は別だ。
さっきの攻撃で目に対しては有効なのは実証された。
火山地帯の生命体なら意味がないかも知れないが、あのドラゴンは火山帯生物ではないだろう。
もし、火山帯生物なら火山と無縁の森に生息したりはしないはずだ。
そして、ダークネスドラゴンの叫び声が天地を揺らす。
目の周りも岩石で固めた事で目を閉じる事も出来ず、悶え苦しみ目の中から溶岩が流れ込んでいるのだ。
だが、その間に”自動回復”で回復した雌の方が立ち上がり、突進しようとしていた。
「そうはさせない!」
再び、”鉱物操作術”で雌の足元の地面が消失、前足を地面に埋めさせ、動きを止める。
雌も藻掻くが前足が完全に埋もれ、踏ん張りが効かず、上手く立ち上がる事でできず、動きを止めたところで透かさず、周囲の残りのマグマをOden30
”天授眼”で改めて観察すると雄は神力の7割が削れ、雌は5割が削れていた。
この神力なら”耐性貫通”を行使すれば、神術が通る可能性が出た。
”来の蒼陽”で仕留めるのも手だが、雄の方が急所である頭が”シンク・ホール”に入っており手が出せず、雌も悲鳴を上げながらも急所に対する隙を一切見せなかったので”来の蒼陽”での攻撃は選択肢から外した。
「そろそろ、神力も限界かな……」
よく考えてみるとアリシアには”制約”と言う神術がかけられたままであり、本来の力の10分の1も出せていない。
解除方法はリバインしか知らない。
解除には手間がかかるらしいのであの場では解けなかったのだろう。
もう長くは持たない神力の残量を考えるとこれが最初で最後の1発、ここで決めるしかない。
「これで決めるしかないか」
アリシアは”耐性貫通”と”複合魔術”を放つに最適化したオブジェクトを構成し終え、”空間収納”に格納されていたネクシルを取り出し、ダイレクトスーツを”空間収納”の取り出しを応用して、すぐに装着して乗り込み、TSの能力により、装備していたOden30
そして、Oden30
「TSブート。対象を捕捉!極大魔術を行使!」
敵から鹵獲したネクシル・オイゲート・テレストスをアリシアがカスタムした灰色の機体色の魔術強化改修仕様機であるネクシル・アナプノエの試作型擬似TSが唸りを上げ、カーソルが対象をロックする。
ネクシルシリーズのTSはパイロットの魔術をサポートする機能がある。
真面な戦闘機動は出来ないが、神術的なサポートなら問題はない。
況して、ネクシル・アナプノエは神術的なサポートに特化している。
本来、”極大魔術”に使われる膨大な神力も発動時間もネクシル・アナプノエにより大幅に高効率、かつ短縮される。
アリシアは残り全ての神力をネクシル・アナプノエに注ぎ込む。
「ドラメント・フォール!発動!」
それと同時にOden30
今のアリシアでは記憶にあるだけで発動すら出来なくなったが、ネクシル・アナプノエの補正があれば、辛うじて発動出来る最大級の”極大魔術”……丁度、その時、溶岩の池に沈んだ雄のドラゴンが頭から飛び上がり凄まじい形相でこちらを睨みつける。
だが、弾丸により強化された”ドラメント・フォール”は自由落下による加速も加算され、流星の様に2匹のドラゴンの頭上に叩き込まれる。
そのまま、ライフルで狙っても良かったが、確実に当てないとならない関係上、生物的に死角になり易い真上から攻撃する事が最適だ。
彼らの”神力探知”の挙動を見てもそれは明らかだ。
そのまま放つと避け、防ぐ可能性があるのでその可能性を封殺した。
光、雷、炎の3種の神術が互いに励起させ、3色の螺旋の光の柱となり、落下による質量加速も合わさり、頭上から衝撃波と共に凄まじい激突音が森を駆け抜ける。
光の柱が2匹のドラゴンに容赦なく直撃、2匹の雄叫びが天や地を揺らし翼は抉れ、尻尾の先端が消し飛んでいく。
体の脆い部分から順に削れ翼の7割が消え、アリシアは「やったか……」と思わず、呟いたのだが、それが合図だったのだろうか……突如、ドラゴンの体を紫光の膜が包み”ドラメント・フォール”を防いだ。
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