男は雷と共に
「な!あの光は!」
あの光はアリシアとリバインを隔てた光の壁と同じ光だった。
最初はダークネスドラゴンは使っていたのだと思っていたが、今までの戦闘で一切使わなかった事を考えるとこれはダークネスドラゴンによるものではない。
“天授眼”を使っても”光魔術”は確認出来なかったので何か、別の能力の代替えしたのではと疑っていたが、再度、使われるところを見るにその可能性は消えた。
恐らく、第3者の介入だ。
何者かは知らないがどうやら、ダークネスドラゴンを使って自分を殺したいらしい。
そうでないなら、ダークネスドラゴンを擁護する真似はしないはずだ。
「クッ!もう……力が……」
アリシアの神力が切れたと共に”ドラメント・フォール”の攻撃は停止した。
ドラゴンの翼の大半が破損、尻尾も完全に消滅、体力の奪う事は出来たが、致命傷とはいかなかった。
それと同時に竜の神力が急激に上昇、暴走状態に入った。
何者がドラゴンに無理やり神力を注ぎ、パワーを上げており、”自動回復”により急激に傷が癒えていく。
それに加えて、ダークネスドラゴンのアリシアに対する怒りも頂点に達したようで今にもアリシアの殺そうと殺意を向け、睨みつける。
そして、2匹のダークネスドラゴンの大きな雄叫びが共鳴、大地を揺らし始めると周囲の神力が励起、ダークネスドラゴン達は天を仰ぐように大きく息を吸い始めた。
「まさか、これは!」
リバインが言っていた”大技”の前兆だとすぐ理解できた。
既に紫光の壁で退路は断たれている。
上空にも既に紫光が囲み、閉じ込められている。
そして、今まで以上の攻撃が来るならアリシアに逃げ道はない。
今は”大技”を放つ予備動作をしている。
ならば、今が攻撃のチャンスと思い、アリシアはネクシルのOden30
尤も、神術は込められないのでただの弾丸と化しているが、それでも弾丸そのものも高威力だ。
だが、又しても紫光の壁に阻まれ、弾丸が通用しない。
それどころか紫光の壁がアリシアとダークネスドラゴンを隔て、こちらの攻撃の一切を通さないように壁を張る。
恐らく、ブレスを放つ瞬間に解除、こちらだけを一方的に焼き殺す気だ。
(さて、どうした物か……あの壁を破る手段は今のところ思いつかない。神力もほぼ空で真面な術すら打てない。正直、言えば絶望的……)
だが、意外と諦める気が全く起きない。
もしかすると、最後の5秒でなんとかなる気がする。
別に楽観しているわけではない。
多分、そう言う経験を多くしたからそんな風に構えていられるのだ。
だから、アリシアは諦めない。
そして、ダークネスドラゴンが息を吸い込み終わったと同時に紫光の壁が消え、ダークネスドラゴン達が蒼い炎のブレスを吐いた。
その勢いは凄まじく森の木々は触れる前に燃え尽き、地面も触れてすらいないのに溶解する。
その熱に炙られるまでもう本当に5秒くらいしかない。
だが、アリシアは正眼据え、敵を見据える。
目を逸らした時点で勝てない。
だから、この戦いから目は背けない。
(どんな瞬間だろうとわたしは諦めない。わたしの手は全てに届くのだから……)
「なら、まだ勝ち目はあるな!」
その時、頭の中にどこか懐かしい男の声が聞こえた。
◇◇◇
ブレスは紫光の箱の中で爆炎をあげる。
密封された容器の中でも爆発は容器の中の木々を薙ぎ払い、魔物を焼き殺し、衝撃波でシェイクして死体が霧散していく。
流石、紫光の箱もひび割れ、上部から蒼い炎の柱が噴き上がる。
その中でもダークネスドラゴン達は悠然と立ち尽くしていた。
そして、紫光の壁が消え去り、ダークネスドラゴンの前に1人の頭巾を被った少女が現れた。
「存在の消滅を確認。これで秩序は保たれる」
少女は無表情な顔でアリシアがいたところを見下ろす。
頭巾の中から整った可愛らしく美しい精巧な人形のような容姿を覗かせていたが、彼女は淡白でどこか機械的な存在に思える節があった。
「これで世界の脅威は消えた。後は影響の算出を……」
その瞬間、背後から血が勢いよく噴きあげる音がして彼女は思わず、後ろを振り返る。
無表情ではあったが、不快なモノを見たように眉が微かに動き、我を疑う。
そこには死んだと目され消滅したはずの機械人形がおり、左手の蒼い刀を振り、雌のダークネスドラゴンの首を切り落としたのだ。
あり得ないと心で淡々と分析するように呟いた。
あのダークネスドラゴンには魔術的な絶対補正をかけ、全身の鱗は絶対に破壊不可能なレベルでの補正をかけたはずなのだ。
それでも尚、目の前の者はそれを紙同然に斬り裂き、竜の首をもぎ取った。
それを見た雄のダークネスドラゴンもすぐに行動に移そうと体を動かし、口で噛み砕こうと機械人形に迫るが、さっきの攻撃の反動が大きく動きが鈍くなり頭の軌道が僅かに逸れ、敵の機械人形がそこを横切る。
そして、横切ったと同時に蒼い刀を天高く上げ、その首を両断した。
ダークネスドラゴンは絶命を立てる事も出来ず首が先に落ちた雌の首の横に落ちる。
この彼女はアリシアを侮っていた。
アリシアには最後の切り札として”急所必中”と”急所創造”を有した”来の蒼陽”があり、首筋に放たれたその斬撃により彼女が創った魔術的な防御補正すら貫通、ダークネスドラゴンの首を斬り落ちして見せたのだ。
「馬鹿な……」
感情と言うモノが希薄な彼女すら、その光景に思わず、目を凝視させる。
そして、アリシアの乗る機械人形……ネクシルの目がこちらを睨むのが見えた。
彼女は慌てて紫光の壁を展開、防御しようとした。
「喰らいな!」
どこからともなく男の声が聞こえたと思うと彼女の背後から雷の槍が彼女の胸を貫いた。
だが、彼女の胸から血が流れる事も痛がる素振りも見せない。
だが、確かに異変はあり、雷を引き抜こうとするが、微動だにしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます