初の魔物?

 シルバーウルフ


 魔狼 C


 筋力 1240


 神力 540


 忍耐力 800


 因果 30




 セットオブジェクト 無し


 振動刃6 俊敏8 小回り8 硬化5 自動回復2 




 詳細

 魔狼の中でも上位に位置する存在。

 毛は並の金属よりも固く強靭、加工が容易とされ重宝され高値で取引される。

 ただ、その俊敏さと堅牢な毛から討伐難易度は高く、凶暴な魔物と知られており見つけ次第、排除が推奨されている。

 触媒石は心臓。




 誰が書いたのか知らないが、ご丁寧に説明書きが用意されているのは右も左も分からないアリシアにとっては貴重な情報だ。

 しかし、この狼そこまで危険なのか?と疑問が浮かんだ。





(基本ステータスわたし以下なんだけど?いや、量子情報には載っている事が全てとは限らないか……でも、とにかく、斬るしかない)





 アリシアは敵との間合いを測り、”来の蒼陽”を一閃奔らせた。

“来の蒼陽”は敵の頭部の正中線を真っすぐと両断、狼はそのまま失速して倒れた。




「意外とあっさりね」




 詳細的にはもっと苦戦すると思っていたが、頭部の斬れ易そうなところを斬ったら、斬れてしまった。

 楽に倒せたなら別に良いのだが、これはどうした方が良いのだろうか?

 詳細欄には高値で取引される等、書いていたが今後、現金が必要になる可能性もある。

 この世界の金を手に入れるには替金できるモノが必要だ。

 それに”空間収納”は丁度、空だ。

 それにこの類の魔物(?)が生息するなら、狩れるだけ狩って資金源にした方が良い。


 何より生きる為には金がいるのは世の常だ。

 働いて金を稼ぐのも世の常、不労所得は自分には合わない。

 とりあえず、森を抜けるまでの間で襲われたら積極的に狩ろう。


 アリシアはシルバーウルフの躯体を”空間収納”に格納した。

 虚空に現れた渦の中に躯体が吸い込まれていく。




「さて、どっち行こうかな?」




 行く当てがある訳でもこの世界の事も何も知らない。

 とりあえず、太陽が出て来る方角に向かう事にした。

 なんとなくだが、記憶を失う前、東にある国に所縁があった気がしたからだ。

 今はそんな安直な理由で良いはずだ。

 アリシアは深緑の森の中を一歩一歩、歩み始めた。




 ◇◇◇




 それから数日後





「ふん!」




 アリシアは大太刀に変形した”来の蒼陽”を払い、シルバーウルフの頭部を正中線から両断、生暖かい返り血がアリシアの全身を濡らした。

 アリシアは”来の蒼陽”を構えたまま歩き続ける。

 まだ、周りには飢えたシルバーウルフの群れがアリシアを恨めしそうに睨みつける。

 アリシアは殺したシルバーウルフの死体を”空間収納”に格納する。

 だが、既に無数の死体により流れた血溜まりが辺りを赤く染めていた。


 恐らく、シルバーウルフの縄張りに入って早3日。

 寝る間すらなく休みなく襲い来る敵にいい加減、辟易してきたところだ。

 体力的にはまだまだ余裕だが、食べ物らしい食べ物を口にしていないので口が寂しく気力の方が先に失せそうだ。


 敵があまりに執念深いので食事と水分補給と言ったら敵の生き血だけだ。

 口周りすら敵の赤い血で血塗られている。

 排泄に関しては”神時空術”を介して近場の適当な空間に送りつけている為、そう言う行為をしなくても戦い続けられる。


 記憶を失ったのもあるのか失う前の自分は結構戦いに関して恐ろしいほど合理的だったと分かる。

 正直、かなり白けるレベルだ。

 “神時空術”のこのような活用法が習慣のように行っていた事を戦いの途中で気づいた時は少し驚いた。

 こう言う機会でもないと我を振り返る事すら前のアリシアはしなかったか出来なかったのかも知れない。

 無駄な時間を割かない事と隙を見せない観点では非常に有用な活用法だとは思う。


 このまま、戦い続ける事は出来るが……正直、水浴びがしたい、肉が食べたいという我欲が出始めてきた。

 気合いで押し殺せそうだが、やはりしたい。

 その気持ちが現れたのか敵の数が減った事にラストスパートをかけ、”来の蒼陽”を振る速度と脚の速さが上がる。

 シルバーウルフは知能が低いのか勝てないと分かるはずにも関わらず、アリシアに執拗に迫り、それに反撃したアリシアは群を全滅させた。


 とにかく、東で向かって敵の群を抜けようとしたが、敵の群がいなくなった頃に丁度、綺麗な水辺を見つけた。

 アリシアは息を切らせながら装備していたアンダーウェアーの右リストバンドにある開閉ボタンで徐に解除した。

 着ていた鎧は"魂の空間収納"に格納、アンダーウェアーも放り込んだ。


 それからしばらく、全身を洗い流すように隈なく水に浸かり、体を池の底に沈め、寝た。

 池は思いの外深く、何も聞こえず、静謐としていて澄んだ水の冷たさが心地いい。

 アリシアはそこでしばらく、寝た。





(呼吸は……どうしたっけ?)




 自分が水の中にいる事を改めて思い出し、その様に思ったが、意外と問題無かった。

 寧ろ、感覚的には外と変わらないような感じで呼吸出来ていたのは不思議だ。

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