アリシアの敵意

 その一方





「どうやら、各々の戦いが始まったようですね」


「そうですね。ではこちらも始めるとしましょう」




 アリシアは心の中からアステリスが齎した剣であるサタン・アクト・バルムンクを灰色をした大剣に迫るような無骨なロングソードを取り出し、その形状を肉厚な刀の形状に変える。

 その剣の能力は以下の通りだ。




 サタン・アクト・バルムンク


 神力保有 SSSS


 偽神特攻 極大 偽神特攻 極大Ⅱ 偽神特攻 極大Ⅲ 偽神特攻 極大Ⅳ 偽神特攻 極大Ⅴ 偽神特攻 極大Ⅵ 偽神特攻 極大Ⅶ 偽神特攻 無限 攻撃力 極大 攻撃力 極大Ⅱ 攻撃力 極大Ⅲ 攻撃力 極大Ⅳ 攻撃力 極大Ⅴ 攻撃力 極大Ⅵ 攻撃力 極大Ⅶ 攻撃力 無限 心意斬撃 ? 不浄吸収 極大 不浄吸収 極大Ⅱ 不浄吸収 極大Ⅲ 不浄吸収 極大Ⅳ 不浄吸収 極大Ⅴ 不浄吸収 極大Ⅵ 不浄吸収 極大Ⅶ 不浄吸収 無限 浄化 極大 浄化 極大Ⅱ……




 エクストラ・スキル


 不浄滅殺






 とにかく、悪魔を殺す事だけに特化した竜殺しの逸話に因んだ剣だ。

 ”不浄吸収”と言うSWNを吸収する事に特化したスキルに”神概念術”系統の”偽神特攻”を最大まで乗せ、吸収したSWNを浄化でZWNに変換してアリシアが使える神力として利用する。

 そして、”不浄滅殺”により”偽神特攻”の能力値を5乗に引き上げると言う徹底ぷりだ。


 動物や物に対してはただの剣だが、偽神や英雄、悪魔に対しては恐ろしくよく刺さる。

 それらの個体が近くにいるだけにその能力は絶大なモノである。

 過越を拒否した人間がこの剣の近くにいれば、悪魔と認定されその命を一瞬で終わらせるほど強力な武器である。




「中々、厄介なモノを出しますね。差し詰め、悪魔殺しの剣ですか?」


「創造神もあなた達を舐めた事を激しく後悔していましたからね。同じ轍を踏まないように次は確実に殺すために用意したらしいですよ」


「あはは、いやはや、恐ろしいですね。しかし、そのような剣をわたしに使ってもよろしいのですか?サンディスタールに使った方が良いのではないですか?」




 サンディスタールの妨害がある以上、この剣を使えば、しばらく使用不能になる事を言っているのだろう。

 ただ、逆にミトラの言動からして使って欲しくないと言う暗示と言う事になる。




「過越を阻むあなたはここで確実に滅ぼす。ここで出し惜しみして倒せなかったら、冗談では済まされませんからね」


「全く、あなたの底が知れると言う者です。わたしごときに切り札を使うとはそれではサンディスタールには勝てませんよ。どうせなら”過越”などやめて無知で愚かな人間など全員地獄に落として見捨てれば、あなたの負担に楽だと言うのに……」




 その言葉にアリシアの眉が険しくなる。

 明らかに不機嫌な顔をして敵意を抱いている。




「あなたに理解されるとは思っていません。わたしはあなたの倒しに来た。それ以上の理由はありません」




 アリシアは”汎用戦術コンバット9”と言うオブジェクトをセットした。

 魔術に完全に依存しない非魔術戦を主体にした戦術を行え、術の妨害下でも安定して発動できる術で構成された戦術のオブジェクトだ。

 剣先をミトラに向けて両手に持ち構え、右手に"空間収納”から取り出したG3SG-1アリシアカスタムバトルライフルを装備して牽制しながら接近した。


 敵には”術妨害”や”術無効”がある。

 生半可な攻撃系の神術を放ってもほとんど効果はない。

 以前に”無効貫通”を加えて呪いをかけたが、彼のスキル構成をよく見ると”貫通妨害”と言うスキルもあった。

 恐らく、前回の対策の為に取得したのだろう。

 圧倒的な術で殲滅すると言う手もなくはないが、それだとあまりに強力過ぎてこの惑星が消滅するだろう。

 それはできないのでここは術を使わず、実体武器で殺すしかない。




「ははは、無駄ですよ。何故なら、わたしの前では無意味なんだから」





 その瞬間、乱射しているG3SG-1アリシアカスタムバトルライフルを持つ手が敵ではなく、自分に向けられている事に気付いた。

 アリシアはG3SG-1アリシアカスタムバトルライフルから手を放し、距離を取った。




「一体何が……」




(精神操作系の術?そんなスキルはなかったはずだけど、それに”支配無効”と言うスキルを持つわたしには支配系の能力は効かない。ただ、”支配無効”が自動発動した様子はない。となると、それ以外かな……)





 アリシアはG3SG-1アリシアカスタムバトルライフルを”空間収納”に戻し、KSG-25MkⅦショットガンに切り替え、再びミトラに肉迫する。

 だが、今度は前進したはずが、逆に後退した。




「ははは、どうですか?わたしには指一本手が出せないでしょう?」


「なるほど、因果魔術ですか……」


「流石、戦神。見事の洞察力です。2回も発動すれば、流石に発覚しますか」




 ”因果魔術”……アリシアはスキルの事は大抵、頭に記憶しているが、その知識の基となったアカシックレコードの中には一部のスキル情報が欠落している。

 それはサタンの作為を感じさせる意図的な欠落だ。

 恐らく、その中の1つがこの”因果魔術”だ。


 私見だが、原因と結果の逆転をさせる魔術と言ったところなのだろうと言う事は名前から読み取る事ができた。

 しかし、彼の魔術は原因と結果の逆転以上の能力があった。

 受けた技を分析して見るとのだ。


 だから、アリシアがと言う原因をに変換して本来起こるはずの敵に弾丸が放たれる事象を自分に放つと言う結果に書き換えている。

 その力で前進すると言う原因を後方に下がるに書き換えたのだろう。




「ふふふ、これはあなたでも対処はできないでしょう。なにせ、地獄の獣にはこの類の能力はない。無い能力に対して対抗する能力を獲得するのは難しい」




 確かに地獄の獣にこの類の能力を持った個体はいない。

 そう言う能力がないなら、その手の能力に対する明確なカウンター的な能力は確かに淘汰されるだろう。

 ただ、それはミトラの認識の甘さの露見でもあった。

 地獄も常に流動して、変わっている。

 WNが通り難い世界である故にその全容を知るには直接出向くしかない。

 直接出向いた事があるアリシアならまだしも、偽神であるミトラは地獄では真面に活動できず、地獄の全容など知っているはずがない。

 そして、長い闘争の中で常に獣達は自分が生きると言う貪欲を叶える為に確かに変質していく。

 故に明確なカウンターがなくても漠然としたカウンターを持つ個体ならいるのだ。

 アリシアは再び、肉迫しながら、KSG-25MkⅦショットガンを構える。




「ふふふ、無駄ですよ。いくら狙おうと!」




 その瞬間、彼は因果を書き換える。

 KSG-25MkⅦショットガンをアリシアのコックピットに狙うように仕向ける。

 だが、彼の機体を裏切り放たれた一撃が鈍く重い音が鳴り響き、その弾頭がミトラに直撃した。


 ミトラは爆風に煽られ、後方に飛ばされる。

 続け様にアリシアはKSG-25MkⅦショットガンを放つが、今度はショットガンらしからぬ唸り声をあげ、弾丸がミトラに迫る。

 ミトラが回避しようとするが、ミトラの戦闘軌道が単調な所為でアリシアには簡単に当てられる。

 ミトラは弾丸に悶えながら必死に回避しようとするが、弾丸に刻まれた様々な能力が自分の能力を削っていくのを感じる。




「なぜだ!なぜ!因果が書き換わらない!」


「分かりませんか?確かに因果魔術に対する直接的なカウンターはわたしにはない。でも、因果魔術もにより成り立っている。なら、認識を偽装すれば、そもそも発動しないだけです」




 そう、書き換える事象が正当でないなら書き換えられない。

 ”認識偽装””神力偽装”と言うスキルを使い、手に持っている物は実はM20MkⅧ式上部取り付け式マガジン型バズーカなのにKSG-25MkⅦショットガンに見せかける事でミトラが「アリシアのショットガンをネクシレウスのコックピットに向けろ」と言う因果改変を行っても手に持っているモノがショットガンではないので認識が正当ではない。

 故にその時点で不発するのだ。


 確かに”因果魔術”に対するカウンターはないが、”認識偽装”や”神力偽装”は”ヘル・カメレオン”がよく使っていた手だ。

 見分けられない時は気配が分からず、何度の鋭い舌に胴体を貫かれ、死んだ事をよく覚えている。

 尤も、神力の量によって認識力が上がれば、この偽装もすぐに発覚するはずなのだが、ミトラは未だに気付いていないようだ。




「因果が操れる程度に図に乗らないで下さい。その程度に勝った気になるなんて、戦争舐めるな!」





 アリシアはいつになく辛辣な言葉で相手を非難する。

 敵が悪魔であり、自身を戦の神と揶揄される以上、戦いに関してアリシアは人一倍に厳しい。

 ヒーロー願望で兵士になろうモノなら徹底的に根性叩き直すほどだ。


 極東基地で天音から新兵教育を任された事があったが、その時にもロア・ムーイ気質のヒーロー願望者と言うか、人類の綺麗なところだけしか語らない夢見る夢男がいた。

 近い将来を見据え、人様に迷惑をかけないようにその人の良いところを残しつつ、そう言った綺麗ごとを美化する子供染みたところは徹底的に排して今では任官して将来有望と言われる少尉になった。


 アリシアは基本的に戦いに綺麗ごとは持ち込まない。

 況して、敵を雑魚扱いして舐める奴などもっと嫌いだ。

「雑魚扱いする余裕があるなら必死に戦え!」と叱責した事もあった。

 ミトラの対応なんてアリシアが叱責するレベルだ。




「く……確かに少々、予想外ではある。だが、わたしの事を舐めないで貰おうか!」




 ミトラは再び、”偽神召喚”を行い複数体の名前の分からない偽神を取り出した。




「我が糧となるが良い!」




 ミトラはそう言いながら取り出した剣を振り向き様に走らせ、偽神達を殺害した。

 そう言う偽神の能力だったのだろう。

 殺された事によりミトラに大量の神力が流入した事でミトラの認識力が上がったとアリシアは直感的に理解した。

 もう、偽装系のスキルは使えない。




「これであなたの策も潰えた。さあ、お遊びはお終いだ。次こそ自分の武器でも自滅して貰おう!」

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