犯人

 アリシアは最初に集まった大広間にリテラ達を介して皆を集めた。

 そこにアリシアが現れ服が土まみれになっている事を面々は気にするが、アリシアはそれを流して彼らの前に進み出る。

 その方にはここで借りた肩掛けのバックを携え、それを床に置いた。




「皆さんに報告がありますが……その前に!」




 アリシアがアイコンタクトをフィオナに送るとフィオナはその合図は「待ってました」と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべ、彼女の前にいた腕を後ろに組んでいた室井に手錠をかけ、更にさらに持っていた携帯式の縄を取り出し室井を締め上げた。

 それに山村警部を含めて辺りが騒然とする中、室井は大きな声を上げた。




「一体、何のつもりだ!」


「何のつもりではありませんよ。室井さん……いや、ジェームズ・モリヤーティ」




 その言葉に室井は息を呑み、目を逸らした。

 恐らく、正体がこんなにも早く露見するとは思わず、動揺して目を逸らしたのだろう。

 良くも悪くも天才だっただけに全能感に浸り過ぎた彼の油断がこの結果を招いたのだ。

 だから、フィオナに最初から監視を命じていたのだ。

 油断している彼はアリシアに勝てると自惚れ、圧倒的な愉悦を得ようと高みの見物をするために絶対に逃げない。


 その高慢さが彼の命取りである。

 つまるところ、アリシアがこの屋敷に来た時点で彼は詰んでいたのだ。

 殺人をする人間の顔など色々、あるが彼など見た瞬間、一番分かり易く彼に意識を集中させて思考を読んだらすぐに正体が分かった。

 尤も、ここにいる殆どが一度は人殺しをしている顔なのだが……。




「では、まず結論から言わせて頂きます。犯人は3人。1人はそこにいる室井こと、犯罪芸術家 ジェームズ・モリヤーティ。そして、その協力者となった犯人がいる」




 警察の中にはジェームズの名を知っている者がいるらしく。

 その名を聴いて室井を見つめ、「アレが本物か?」とか「あんな冴えないオッサンがか?」などと呟いている。




「一体、誰が犯人なのです!」




 山村のその質問にアリシアは指を立てて指さした。

 その指先に皆の視線が集まる。




「あなた達です。神無月さん、氷室さん」




 その言葉に2人は無表情を貫いていたが、内心では激しく動揺し塞ぎ込む神無月に対して氷室が擁護するように反駁する。




「馬鹿な……わたし達にはアリバイがある。一体、何を証拠に……」


「証拠ならここにあります」




 アリシアはバックを開けて中から透明なビニール袋に入った女性用のダイレクトスーツとヘルメットに謎の巨大注射器、鉄筋らしいモノとそれに繋がった装置を取り出した。

 それを見た氷室は思わず後退る。

 そう言ってアリシアはダイレクトスーツの左脹脛の部分についた血痕を指さす。




「このダイレクトスーツのこの部分には被害者の血痕が付着しています。そして、これは女性用のダイレクトスーツであり、その内側には神無月さんの皮脂がついているはずですよ。勿論、ヘルメットには毛髪もついている。あの部屋が密室で誰にも入れない。ならまず、血痕が付く事はあり得ない。そして、私見ですが、ダイレクトスーツの右肩に男性のモノと思わしき皮脂も確認できます。恐らく、氷室さんのモノかと考えます」




 山村は急いで現場の科捜研に証拠を調べるように指示を出しアリシアは科捜研に証拠を渡した。

 これでほぼ犯人は確定したも同然であり、それが分かった途端、岡田が神無月の胸倉を掴んだ。




「テメ!一体、何のつもりだ!この下種や……」




 彼女は思わず目を瞑る。

「下種野郎!」と言いながら殴りかかろうとする彼にアリシアは額に指弾の為の鉄球を加減して放ち彼を怯ませる。

 何が起きたか分からない彼にアリシアは言い放つ。




「下種はあなた達です。岡田さん、白川さん」




 アリシアの口調は穏やかだったが、睨み殺すように彼らを見つめる。

 ある意味、今回の事件は被害者が加害者になったのだ。

 その原因を作ったのは他でもない彼らだ。




「そこで黙ってわたしの話を最後まで聴きなさい」




 2人はアリシアに威圧に気圧されて口を噤んだ。




「今回はどのようにして犯行が為されたかです。まず、犯人は2人。この2人によって犯行は成立しています」

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