容疑者
(エリート校のプライドか……下らない)
確かに万高の偏差値は低いが、ハッキリ言えばこの男は頭が悪そうだ。
勉強はできるのかも知れないが、それだけの男である可能性が高い。
古今東西弱い犬程よく吠える。
虚勢を見せる為に自分を大きく見せようと知識自慢を学歴自慢したがるが、まさに典型だ。
「わたしの態度が不快を与えたならすいません。ですが、お話した通り捜査に関わる事ですのでお話は出来ません」
「テメー誰の許可得て、逆らってるんだ!エリートであるオレに従え!」
(教えろ教えろ症候群か……偶にいるんですよね)
気に入らない訓練兵に任官した少尉達が仕事で使う訳でもないのに「プライベートを教えろ」だとか「お前が抱えている秘密を全部教えろ」だとか情報を有効活用する訳ではなく、ただ自分の貪欲を満たしたいだけに職権を乱用する馬鹿な男と女の少尉達がいた。
訓練兵は少し訳アリの人達で少し優遇を受けているのが気に入らず「少尉の個人のご興味ならご容赦願いたいです」と頼んでも「興味だろうとなんだろうと答えろと言われた事には答えれば良い」と子供みたいに喚き散らす恥知らずな少尉達が極東基地にいたのを目撃して釘を刺した事がある。
その時は「権力が何の為にあるのか、それすら分からないのか!愚か者!」と威厳ある雰囲気を出そうとそんな事を言った事があった。
言いたかった事は間違っていないので結果的に良かった。
「機密だと言いました。これ以上、逆らうなら名誉棄損と公務執行妨害で逮捕しますが頭が良いならその覚悟があって言っていますよね?」
そう言いながらあの時も今回も殺気を交えながら威圧(スキルではない)をかけて黙らせた。
ちなみにその少尉達はその部隊の部隊長に突き付けて事のあらましを説明してアリシアはこう尋ねた。
「「秘密を抱えたままで部隊に馴染めると思っているのか?」と言う発言をしていましたが、それは機密を抱えた部下とは馴染めない。つまりは信頼しないから連携しないと言う意味ですか?そのような部隊運用法があるなら是非、教えて下さい」と部隊長に聴いてみたが部隊長は少し困惑し引きつった顔をしながら少尉達を営倉に送った。
その時の少尉達と同じように男性生徒も縮こまり口を閉ざした。
まるで蛇に睨まれたカエルのようだ。
これでようやく、話が進められる。
いくら頭が良くても高慢がある限り理性を失う。
その辺を付けばいくら頭が良くても付け入る隙はいくらでもあるのだ。
どれだけ理性的に振る舞おうと高慢な相手を御する方法はいくらでもある。
ただ、この中の数人は今の彼と同じようにアリシアの事を快く思っていないようだ。
公務執行妨害で逮捕されたくないから言わないだけだ。
◇◇◇
だが、まず容疑者から話を聴く事になった。
まず1人目は生徒 神無月・由香里。
彼女はいち早く、テストを終えて先生の許可を得て一度、トイレに向かった。
その後、被害者の望月・十四郎の部屋の前を通って曲がり角を曲がりトイレに向かってだけで部屋には入っていない。
2人目部屋のカギを持っている講師 氷室・恭也。
この施設は彼の立案で建てられたモノであり、犯行時間ほとんど教室にいたが一度トイレの為に立ち上がり、部屋を出て死んだ男子生徒 望月・十四郎の部屋の前を通り、部屋ながら扉のオンオフ式のマジックミラーで部屋の様子を一瞬だけ確認して曲がり角にあるトイレに行って帰って来た。
丁度、その時先にトイレに行っていた神無月とすれ違う。
3人目 生徒 岡田・正文
さっきアリシアに突っかかって来た目つきの悪い男だ。
望月と徒党を組んでいた友達。
彼もまた、テストを終えた後、トイレに向かい望月の部屋の前を通りトイレに向かう。
その時に不自然にも同じ仲間内の4人目の生徒 白川・勝……無関心そうでこの事件の事をどうでも良いみたいな顔をしている男子と共にトイレに行っている。
5人目 管理責任者 室井・綱紀だ。
彼に関してはこの施設の管理をしていた為、他の者と違いアリバイらしいアリバイがなく証言によるとその時間帯はずっと部屋でテレビを観ていたと証言している。
6人目
この施設の人間ではないが犯行時間にこの周辺のウロウロしていた 鹿島・恭二。
なんと、この人、出所したばかりにヤクザだ。
今は堅木らしいが警察が問い詰めても「ただの散歩で気になっただけだ」の一点張りだ。
以上、6名が容疑者となる。
「この中に犯人がいるんですね」
霧島は力を籠めた声で容疑者を睨む。
そして、最初に睨んだのは鹿島だった。
「な、なんだよ、オレはやってねーて言ってるだろう!」
「しかし、ですね。聴くところによるとあなたは殺人未遂を7回行い、服役していたそうではありませんか?一番殺し慣れていると言う点で見れば心理学的にもあなたは怪しい」
確かに殺し慣れると言うのは犯行する上で必要かも知れない。
殺意以外で殺せるとしたら理由はそれくらいだ。
ただ、鹿島さんには動機は皆無である。
それに……。
「彼はまず、犯人ではありません」
アリシアはそう断言すると皆が騒然とした。
皆が一様に鹿島を疑っていたが、アリシアが反対を事を言ったからだ。
そこでさっきアリシアに難癖をつけた岡田が反駁した。
「なんでこのオッサンが犯人じゃねーて言えるんだよ。このオッサン一番怪しいだろう!」
「理由は簡単です。鹿島さん」
「なんだ?」
「あなたのこの山で拳銃を使いましたね?」
鹿島はギクリとした顔で一歩後退る。
それに山村警部が問い詰める。
「どういう事です?拳銃を使ったとは?」
元ヤクザが拳銃といけば穏やかではないだろう。
だが、きっと想像しているのと違う。
「あなたは恐らく、この山に昔、拳銃を隠していた。だから、処分しようとも思ったがあなたはこう思ったんじゃないですか?「この山の鹿を狩ろう!」とかですね。だから、拳銃を狩猟用に全部の実弾を撃ち尽くし、この山で鹿肉を食べたはずです。その時、鹿の血が大量についたんでしょう?だから、着替えて山を降りようと思ったが血の匂いが少し気になりここでシャワーを借りようと立ち寄った。違いますか?」
彼の体からは微かに硝煙の香りと僅かな獣の血の臭いがしており、この山に生育する獣と言えば、鹿しかいないのでこれら2つを現せるとそう言う仮説になる。
あくまで仮設の域を出ない話だが、全員が鹿島を一斉に注視すると鹿島は「もうバレている」と観念したのか全てを打ち明けた。
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