地獄(しれん)は魂に強さと洗練を与える
地獄
「ここが地獄ですか?」
イリシアは訓練用である黒いダイレクトスーツ姿で地獄を訪れた。
辿り着いたのは石畳で出来た巨大な石の柱が無数に縦一列横一列に並んだ部屋。
格子状の窓があり、そこから差し込め薄暗い雰囲気を出す。
何処か冷たく、生命が凍り付くような感覚するあるほど静謐としていた。
「ここは地獄でも比較的に平穏な場所です。あなたにはこれから最下層に向かうまで訓練を積んで貰います」
「最下層は此処よりも凄いんですか?」
「夫も最下層まで赴いたようですが、とてもじゃないが耐えれたものじゃない。こんな世界の不法を働いたとは言え、「我が子を入れるのは不憫だ」と言わしめたほどです。地獄では活動はそれだけ負担がかかる。ですが、あなたには地獄の獣や亡者と戦って貰います。地獄で戦えるほどの力が無ければ、サンディスタールには勝てない。想像を絶する苦しみがあなたを待っている」
「犠牲無くして救えるものはありません。あなたが教えた愛はそう言うものでは無かったですか?」
イリシアはアステリスに微笑んだ。
その目は優しく既に覚悟の出来上がった瞳だった。
元々、覚悟で出来ているがきっと本当に想像を絶するのだろう。
このトレーニングの為の地上での肉体をあてがわれ、力を抑制する”神呪詛術”の”制約”と言う枷までつけられた。
神の肉体を持ったアスタルホンですら過酷と言わしめたのだ。
人間の体で耐えられるとはとてもではないが思えない。
それでも、やらねばやらないのだ。
やりたくはないがそうしないと地球に置いてきた彼らが死ぬとなれば、やらずにはいられなかった。
「覚悟で出来ていても現実はそれよりも過酷な運命を伴うのが常です。いけますか?」
「いけますか?ではありません。行くんです!私が!」
イリシアの力強く、ハッキリした声で答える。
その言葉に自然と力と確信が籠る。
彼女は言った事を必ず為してきた。
だから、彼女は「行く」と言えば「行く」。
「やりきる」と言えば「やりきる」のだ。
少なくとも口先と行いが伴わない人間には到底この地獄は耐えられない。
「では、訓練の目的を話しましょう。地獄とは様々な苦しみの世界。肉的にも霊的にも過酷と言わざるを得ません。痛くて辛くて暗い世界です。あなたはそれに耐え、その中でも肉的な誘惑や欲望に囚われる事なく地獄を生き残るのです」
「具体的にどうすれば良いんですか?」
「自分は欲で生きていない。「魂から湧き出るスピリットで生きている」と固く信じるのです。どんな空腹が襲おうと体が引き裂けようと痛みが体を蹂躙しようと発狂して気が可笑しくなろうとそれでもスピリットで生きられると強く信じる。そうすれば、心は癒え、肉体は蘇り、更なる強い魂へと昇華する」
「この部屋では何をするんですか?」
「この類の試練は夫とも私とも修練の内容が異なるので分かりません。何をするかはわたしがこの部屋を去った後に分かります。そういうプログラムなのです」
「分かりました。また、会いに行きます。それまで待っていて下さい」
「はい。待ってます」
アステリスは優しく微笑み、その場から霞の様に消えて行った。
去り際にイリシアの身を案じて「必ず、必ず生きて帰って来て、例え何が起ころうと」と励ましとも何か含んでいるとも思えるような言葉をもらった。
その意味は今のイリシアには分からない。
神様の全てを知っているわけではない。
人間以上の覚悟と信念があるからこそ、その考え方は人からは異常に見られるだろうが、それだけの信念を持てない人間には神の全てが分かるはずもない。
それ相応の苦労をした者にしか分からないのだ。
だから、イリシアにはその言葉の真意は分からないが、アステリスがイリシアに頼みごとを頼み自分はそれをやる。
その事実は変わらない。
「さて、やるとしますか!」
イリシアは意気揚々と地獄へと脚を踏み入れた。
それが想像を絶する地獄である事は想像に難くない事になるのをこの始まりの間から知る事になる。
この部屋の地獄でさえ全体のほんの僅か、全宇宙の中の塵を構成する原子核の1つに満たない等、誰が想像出来ようか。
その始まりとなる地獄とは、突然体が高く宙に浮き、脚を柱に固定、腕を目に見えないゴムに固定された。
そして、頭に指示を浮かんだ。
「腹筋運動で全ての柱を破壊せよ」
どうやらそうしないとここから出られない様だ。
普通の人間の考えなら「無理」の一言で終わるだろう。
しかも、この石の柱はアストロニウムと言う低次元鉱石で出来ている。
モース硬度は気狂いレベルの10億強であり硬く、決して脆くない。
カーボンナノチューブを遥かに凌ぐ位、強靭に出来ている。
そんな鉱石が相手とは追知らず、イリシアは覚悟を決める。
長い戦いを覚悟した。
この部屋にいるだけで人間の一生を60回は繰り返すと覚悟した。
やる事に不安がないわけでは無いが、不安を持っても逃げられる訳ではない。
なら、やるしかない。
イリシアは覚悟を決めて腹筋運動を始めた。
◇◇◇
どのくらいの時間が経ったのか分からない。
石畳の部屋は幾年経とうと色あせる事なくその場に堅牢で重厚な柱が逞しくそこに居座る。
何百年経とうと柱にはヒビも入らず劣化も風化も起きない。
格子越しに差し込める光でその色褪せない灰色の光沢を鈍く光らせる。
しかし、その一角に異様な場所があった。
1本だけ赤く塗られた柱が鎮座していた。
そこには人がくっついていた。
「あぁぁぁぁぁぁっあぁぁぁぁ!」
その人は突然、雄叫びを上げる。
あまりの声の振動に柱が僅かに震えるほどだ。
「ああっああっ!あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
体が焼ける様に熱い。
体は遥かに昔に限界を迎え、それから追い込みに、追い込みに、追い込みを重ねて休ませる事なく戦い続ける。
「あっあぁぁっあっあぁぁぁぁ」
息は喘ぎ、体をガクガクと震わせながら上体を起こす。
腹筋はダイレクトスーツ越しでも分かるほどに隆起し脈打つ。
イリシアのスレンダーな体にこれでもかと言うほどに肉厚な腹筋が詰め込まれる。
腹部がグギギギギと嫌な音を立てる事に見えないゴムが負荷をかけながら引かれていく。
反対側の柱に巻きついたゴムは柱に負荷をかけた。
すると、また僅かにヒビが入る。
この修練を続けた負荷で硬い柱にも確かにヒビを入れていた。
しかし、そんなものは全体のほんの僅かな亀裂で堅牢な柱を折るには程遠い。
イリシアは状態を起こし終えるとぐったりと倒れ込む。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息が激しく荒れ汗の発汗量も尋常ではない。
ダイレクトスーツの体温調節機能が追いつかず、溢れた汗は全身から流れ出て行く。
イリシアの全身は頭から爪先まで血と汗の光沢を纏っていた。
だが、地獄は彼女に僅かな休みを与える程甘くはない。
地獄にいる以上、例え神であろうと天使であろうと罪人として扱われる。
僅か休みを取ろうとしたイリシアに激しい電流が流れ、彼女の大きな断末魔を挙げる。
電流により動かない体を無理やり動かされる。
体への高い負荷は彼女の臓器へダメージを与え、口からドバッと吐血する。
電流で彼女の心拍数は跳ね上がり、生理機能を狂わせる。
自分の意志に関係なく淫らにも尿と精液がダラシなく溢れでる。
彼女の精神と肉体は常に限界を遥かに超え、追い詰められ、彼女の目は白くなる。
口から叫び声をだそうにもそれすら出ず、ガタガタ震える。
人間ではない得体の知れない生き物がその場でビクビクと震えている様な有様だ。
更に気を失う事すら許さず、地獄は彼女を働かそうとする。
目に見えないゴムがヒシヒシと引きを強くして行く。
グギギギギと彼女の体を引っ張って行く。
否、引き裂こうとした。
起き上がらない彼女への報いと言わんばかりに容赦なく引き裂いて行く。
気絶したイリシアは口を大きく開いて行くが既に声すら搾り出せない。
そして、ブシュリと音がした。
脚だったものが柱にくっついたまま血をダラダラと流し、イリシアは反対側の柱に叩きつけられた。
それでようやく気を取り戻すが、その瞬間に激痛が体に奔る。
「あああああぁぁあぁぁぇぇぃあああ!」
こんな苦しみが永遠と繰り返されていた。
その苦しみから生き残る本能として彼女は硬く信じた。
「生きられる!生きられる!」
その言葉に応答する様に失われた下半身が”神回復術”で新たに生まれた。
データが更新され、肉体と精神は更に強靭になっていく。
そして、再び脚を柱に吸い寄せられる。
永遠にこの繰り返しだ。
何の為に自分が此処にいるのか分からなくてなるほどに……。
だが、僅かに残った生存本能が訴える。
(逃げてはダメ。逃げる事は決して許されない。逃げたら死ぬ!)
それを硬く信じる自分がいた。
逃げたら死ぬと何かが囁く。
彼女は今日も地獄を生きる。
◇◇◇
地獄での日々は言うなれば、飼い殺しだ。
生きている状態で永遠に燃え盛る火の海に投げ入れられる様な苦行だ。
イリシアは耐えた。
どのくらい耐えたか、分からないが耐え切った。
地獄の様な腹筋運動は終わった。
床に倒れ、腹部を押さえながらあまりの痛みに涙が溢れる。
彼女の後ろには彼女により折られた20本の柱があった。
「これでようやく終わる……」
だが、彼女は勘違いしていた。
地獄はこの程度では終わらない。
柱の部屋が崩れたと同時に柱の部屋はまた再構築された。
そして、地獄は無慈悲に通告する。
もう一度やれ
地獄と悪魔は人の命に無関心だ。
地獄は一度捕らえた魂を決して逃さない。
逃げる事も決して許さない。
彼女の表情が徐々に歪み、絶望に染まろうとした。
「誰か……助けて……痛いよ!苦しいよ!私は!私は!死にたくない!死にたくないよ!死にたくない!助けて誰か助けて……アステリ……」
彼女は懇願するように泣き叫ぶ。
苦しい、苦しすぎる。助けて欲しい。人を助ける為とは言え、何故自分がこれほどの苦痛を受けなければならないのか……彼女はその時、ハッとなった。
気づいてしまったのだ。
自分もかつて、アステリスに同じ事をしたのだと……アステリスは無実なのに代わりに人間の咎を贖罪する為に戦ったのだ。
自分はそれと全く同じ事を今、していると悟った。
「助けなんてないんだ。アステリス様は助けてくれない。私に助けを差し伸べる事も出来ない。アステリス様は私達を救う為にこんな孤独と戦ってたんだ……」
かつて創造主と呼ばれた存在がどんな想いで咎人を救おうとしたのか……地球と言う地獄の模型の中で被造物に嘲られ、罵られ、そんな罪深い者達の罪を消す為に地獄で身を削ったのだ。
「同じだ。私はアステリス様に救いを求める事が出来た。でも、アステリス様は誰にも救いを求める事が出来なかった」
イリシアは徐々にアステリスの気持ちを感じ始めた。
その想いはまだ、小さいが確かに固く強く根をはる。
「アステリス様は今までたった1人で世界を支えてきた。大切な夫を失って辛かった筈なのに……アスタルホン様を奪ったのは間違いなくわたし達人間の責任なのに……あの人はそんな汚れたわたしを愛して抱きしめてくれたんだ。辛かったはずなのに……人間を殺してサタンの力を弱める事も出来た筈なのに……世界である自分の体を削ってでもわたし達を守ろうとしてくれた。愛してくれた。たった1人……孤独と戦いながら、わたし達を守ってた。あの人は孤独なんだ。でも、だからこそ、わたし達が些細な事でも良いことをして自分に近づいてくれたら自分の事の様に喜んでくれたんだ」
イリシアは痛みの涙と悲しみの涙と嬉しみの涙を混じらせ流す。
(このままでは、ダメだ。もっともっと変わらないと……ダメだ)
「何やってるんだろう。わたし……自分の身可愛さに地獄で命乞いするなんて……浅ましい。わたしは所詮浅ましい人間で罪人だったんだ……アステリス様が頑張っている間も呑気に戦争ごっこしてサタンを喜ばせる愚かな罪人と同じなんだ」
イリシアは自分の卑しさが悔しかった。
結局、自分は変われていない。
その事実が失望もしたがある種の焦燥感にも駆られる。
このままでは、いけないと心が駆り立てる。
「絶対に変わらなくちゃいけない」
覚悟を滲ませる。
「このままじゃダメだ!」
両手の拳を強く握り締める。
「わたしは変わらないといけない。わたしを守ってくれたあの人を孤独にしてしまう!わたしもあの場所に立つんだ!こんなわたしに出来るかは分からないけど、出来るように目指さないといけないんだ!だって、あの人がそれを望んだのだから!この身がどうなろうと構わない。でも、わたしは生きている限り諦めない。ううん。諦めないから生きられるんだ。なら、わたしは諦めない!屈しない!アステリス様!あなたのくれた命がある限りわたしは諦めない!」
イリシアは体を震わせながら立ち上がった。
おぼつかない足取りで再び、地獄に入り込む。
正直、地獄は怖いがそれでも自分を奮い立たせる為に自分の体に鞭を打つ。
最初に芽生えた神に至る為の小さな種は芽生え心に根をはる。
それはまだ、小さく力も弱く無力に等しいと彼女は思うだろうが、彼女は知らない。
彼女の意志に地獄は恐怖を覚えた。
地獄は彼女から命を奪う為に……諦めさせる為に更に過酷な苦行を積ませた。
だが、しかしその後イリシアが屈する事は無かった。
どれだけ空間を揺らすほどの断末魔を叫ぼうとどれだけ発狂し、淫らな行為をしようと地獄で耐えられるのか、疑問に思おうと彼女は常にアステリスの想いを胸に抱き、それを思い出した。
その力強い眼差しは屈する事はない。
そして、幾度も地獄を乗り越えた。
ある時は大陸と言うプレートに押し潰されないように耐え抜くような修練も積んだ。
数多の罪人達が挫折し地獄に魂を売り、あの獣に成り果てもイリシアだけは最後まで屈しなかった。
ただ1人の超重圧のプレートを支え、迫り来る獣達に体を引き裂かれ、内蔵を抉られても諦めも屈指もせず、何度も蘇りその度に肉体は屈強になり魂も肥大化していく。
獣がいくら噛み切ろうと諸共しない鉄の肉体と大陸に押し負けない鋼の膂力で大陸が自重崩壊するまで耐えた。
崩壊後も休む事なく地獄の獣と永遠の死闘を繰り広げた。
大軍の獣がイリシア目掛け襲いかかる。
地獄において天使の命とは自分達の苦しみを一時凌ぎとはいえ、癒す聖水だ。
様々な獣が彼女の命を奪い屈指させようとする。
彼女はより重くより長くより鋭くした"来の蒼陽"を振り回した。
地獄の中で鍛え上げられた天使の肉体とスピリット力は益々、力を増す。
一振りで空を揺らし空間を軋ませ、大地を抉り、雲を切り裂く。
数多の獣は彼女の一太刀で斬り伏せる。
「はぁ……はぁ……」
溢れ出る汗が止まらない。
全身が汗と砂血で塗り固まり、全身の光沢感を出す。
疲労は困憊、地獄は永遠と続く。
地獄に休むという概念はない。
だが、そんな中でも確かに自分の内にある力が湧き上がる。
辛ければ辛いだけ反発する様に力を生み出していた。
溢れ出る生命力が彼女自身を生まれ変わらせ、誕生させていた。
彼女は力強く刀を握り締める。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
たった1人で億にも上る獣と戦う。
倒してもまた、億と戦い次は兆を倒し、京を倒し、垓を倒す。
その過程でも体は削られ胴体を貫かれ、目を抉られた。
ある時は豪炎を吐く獣に肉を焼かれ悶えた。
ある時には知能も持った敵に捕まり拷問や凌辱、辱め、生殖器や脳を弄られる。
だが、その度に何度も復活し復活する度に肉体も精神も強靭となっていく。
そんな地獄の日々を続けていくうちにその過酷さはさらに増す。
人の矮小な想いなど不要と言わんばかりに人の体を纏ったアリシアを世界が殺そうとする。
「はぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁ!」
盛大なうめき声が宇宙を揺らす。
太陽と同等の規模の惑星間衝突を阻止する為に人の体を纏ったイリシアがその間に挟み惑星間衝突しないように耐えさせる。
太陽規模の惑星の高重力と体が軋みをあげ、心臓が全身に血液を送ろうと大きく高鳴り、痙攣し体中の血管と言う血管が不気味に浮き上がり顔から股、足先にかけてまで脈動する。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」
イリシアを接点として惑星の高質量が一点に集中し地面を抉る。
それを地獄で発動する事も難しいスキルを使って地面を補強する。
だが、肉体、精神共にとても辛い。
体の筋肉で惑星を抑え込み同時に精神力でスキルを使っていないといけない。
どちらが欠けても失格だ。
肉体で耐え、スキルで維持し続けないとならない。
この惑星が自らの重力で崩壊するまでイリシアは耐えないとならない。
神の体を使えば、こんな事は造作もない事だ。
ただ、その分、苦労はない。
人間よりも優れた肉体で楽々とスキルを発動してしまえば、銀河を動かす事すら造作もない。
ただ、それでは試練にならない。
己を鍛える意味で人間と言う脆弱な体でやった方が恩恵が大きいのだ。
今のイリシアの肉体はあくまで人間の延長上のモノでしかない。
"神刻術"で関節周りを強化しただけの人間でしかないのだ。
だが、試練は容赦なく彼女を襲う、いや……鍛える。
太陽の負荷に耐え始めて来た彼女を更に追い込む為に太陽の大きさをいきなり1950倍に引き上げる。
「ああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
耐えきれないような超高負荷がイリシアを襲う。
押し潰されそうになるが脚をガクガクと震わせ耐え抜く。
押し潰されても良いのだが、自分が死ねば死ぬほど地獄に屈するのではないか?と言う不安が彼女を駆り立てる。
だが、訓練は終わらない。
しばらく、経つとこれの1950倍が3900倍、3900倍が7800倍と加速しいつしか136億光年の11倍の負荷をその身に受けて耐え切った。
地獄にいながら他の世界を震わせるような重力波を持った強い意志の鼓動は世界中に伝播した。
そして、時間が経てば経つほど訓練の過酷さは苛烈なモノとなり時に光速質量体を無数に投擲する地獄の魔術師と戦い、銀河と同等の大きさでその世界の銀河を支柱に納める巨大なドラゴンと生身で戦い、体を徹底的に鍛え抜き、徹底的に戦闘技術を磨き上げ、永劫とも言える1つ1つが想像を絶するような地獄の訓練を毎日休みなく数えきれないほど行い、彼女の肉体も魂も心も全てが人間のそれを超越していく。
そんな生活をどのくらい続けたのだろう。
少なくとも地球の年齢では計り知れない年月だったと思う。
だが、地獄はまだまだ、終わらない。
これでもまだ、神になる為の洗練の途中なのだ。
人間が考えるほど神になると言うのはお手軽な事ではないのだ。
こうして、アリシア アイと言う人間はどんどん壊れ、1人の完成された神として創り替えられて行く。
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