夕食.3
夕食は賑やかさと温かみに満たされて終わった。いきなり参加して、スフィヤの隣に座らされたティファンは最初戸惑っていたが、それをあれこれ聞く無粋な存在などもちろんこの店にはおらず、スフィヤの新しい門出を祝う言葉と、ささやかな庶民のご馳走で溢れた食卓となった。
それが終わった後、子供たちはスフィヤの受け取ったプレゼントを見ながら和気あいあいと話していたし、大人たちは片付けに準ずる中で、所在なさげに立っていたティファンにラズが声をかけた。
「部屋に戻ってて。スフィヤももうすぐ寝る時間だし、もうすぐ部屋に帰ると思うの」
「ラズ、いいよ。今日は後片付けしなくって。明日は普通に朝から仕事だけどね」
気を利かせたメリラに言われて、感謝とお休みの挨拶をしてラズはティファンを連れて部屋に戻った。スフィヤにも早く戻って寝るように声をかけて、ティファンと2人で2階への階段を登る。
「今日は、招待してくれてありがとう」
「それは私じゃなくてスフィヤに言う言葉でしょう?」
笑いながら返事をするラズに
「スフィヤにももちろん伝えるさ。でも君も、あんな風に出て行った僕に声をかけてくれたから、お礼を言わなきゃと思ったんだ」
「本当はね。来ないんじゃないかって、ちょっと思ってた」
「……来ていいのか、迷わなかったといえば嘘になる。でも、来たよ。向き合うべきだと思ったから。そのために君たちに用があったから」
「用ってどんな?」
「話をしたい。この会えずにいた12年の間のこと、この後どうするか、そして僕がどうしたかったかも聞いて欲しいし、それと同じくらいに、君とスフィヤはどうしたいと思うのか、聞かせて欲しい」
「大人になるって、不思議ね。向き合わなければいけないことが増えていくはずなのに、それと向き合わずに日々をこなすことが目標になってしまうことがある。出会った頃の私たちは、そんなことはなかったのにね」
その言葉と同時に部屋の前についたので、ドアを開けながら「どうぞ」とティファンを招き入れる。
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