日常.2

 夕食は手がかかるから支度が毎度面倒だと思うけれど、食べないわけにも食べさせないわけにもいかないから仕方がない。


 隊商で発った父と上の弟は数日の間は帰らないから、その間だけでもほんの少し手を抜いた料理ができることを内心ラズも、ラズの母も感謝していた。


 穀物を香草で味をつけて炊いて、干し肉を切りながら香辛料を塗して味付けをする。それを洗濯から帰って来た母が貰い物だと言って台所に置いた葉物野菜で包んでいく。小さな妹ができた手伝いはその野菜を水洗いする程度のことだったが、あと数年もすれば彼女もこの台所に立つことになるのだろう。女が3人蠢いて食事の支度をするのは効率も悪いし、互いを嫌いになりそうだから、その頃には多分自分は嫁に出されている。

 

 18になるラズはそんなことを考えながら、煮立ったお湯に、朝の残りの卵を割り落としてスープを作る。結婚相手は誰になるのだろうか。父は隊商の一員だから、適当に同僚の息子にでも充てがわれるのか。歳は同じくらいがいい。10も20も上の男を相手にできる自信はない。父の後輩辺りが相手になったら、その年齢差もあり得る。


 いや、もっと最悪な可能性を考えたら、相手の見つからない上司の息子だったりしたらどうしようか。この村で相手が見つからないとなると、相当に癖の強い男だろう。まだ勧められたこともない縁談に、根拠のない不安を覚えてしまったラズは、鍋をかき回してその不安をスープに溶かしたつもりになることにした。尤も、そのスープも後で自分も飲むことになるのだが、彼女はすっかりそんなことを忘れている。

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