求人.4
「これ、気になる?綺麗でしょ?こんな質の良いもの、なかなかないのよ。おまけにたまに、ここの商人が卸してくれるものには刺繍がされてるものがあってね、村の伝統らしいんだけど。それがすごく価値があるのよ」
「それ、私が作ったんです」
「はい?」
「それ、私が家で機織で作った布です。刺繍も、これはちょっと失敗したやつですけど、私が作ったんです!」
そう言ってラズは外套代わりに纏っていたカーテンの刺繍をメリラに見せた。
「……機織機まで使えるの?」
「はい。あと糸紡ぎと、染色も少しできます。1番好きなのは刺繍ですけど……」
「あんた」
「はいっ!」
「うちの店で働かない?住み込みで。狭いけど職人たちのために部屋があるのよ。子供も育てれるように個室よ。家族で住み込みの連中もいるから、気兼ねすることないわ。うちの父に会ってくれない?今すぐ!」
「……いいんですか?」
今夜のラズには幸運の女神が微笑んでいるようであった。その幸運の陰には、日々当たり前と思いながらやるべきことをこなしてきたラズの努力があったのだが、そんなことにも気づかずにラズはただ嬉しくて、メリラと抱き合って、そしてそのまま仕立て屋の店主である彼女の父親の前まで引き摺られて行ったのである。
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