静かな水面.3
昼に下の弟が帰ってきて家は第一の安堵に包まれた。学舎でも噂は広がっているらしく、しばらく開かれないことになったという。
家族は黙って昼食を食べた。父と上の弟の安否を確かめる術がないのが家族を気掛かりにさせた。そして夕暮れになり、いつも2人が帰ってくる頃の時間が近づくと、母は何度も家の前まで出て行って、この家のある路地の曲がり角の方を数分おきに気にするようになった。
ラズと2人で夕食の支度をしていたけれど、そんな母の様子を見かねてラズが「今日は1人でできる。お母さんは休んでいて」と言ってからは、ずっと家の前庭に母は立ち続けた。日が沈み、夜の気配が濃くなり始めた頃になってもまだ帰らない2人に、ラズも少し心配になってきた。
昨日の出来事に父も弟も巻き込まれてはいないはずだったが、自分の知らない場所でティファンは何かしてしまったのではないか。そんな不安が不意に襲ってきて、彼を信じられない自分のことをも嫌いになりそうになった。いつもなら夕食を食べている真っ最中の時間になって、ようやく父と弟は帰って来た。2人とも疲弊した顔をしていた。
「あぁ…あなた、噂が聞こえて村は大騒ぎよ。無事でよかった…」
そう言って泣きながら父を出迎える母の頭を抱きしめて、父は
「帰ったよ。とにかく食事にしてくれ。話は何もできない。とにかく腹が減った」
と言った。
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