静かな水面.4
何かを聞けるような雰囲気はなく、最近は景気がいいからと毎晩のように食事と共に晩酌をしていた父だったが、今夜も一応酒の用意もしたラズにそれを断った。夕食は重い空気に包まれていた。家族は全員が無事だったことがわかったというのに、何も知らない女たちは、今後のことに不安を覚えるしかなかったし、男たちは黙り込んで食事を口に運ぶだけだ。
「無事でよかったわ」
祖母が口を開いた。
「そうね、本当にそれがいちばん嬉しかった」
「私たち昼に噂を聞いてから、ずっと心配していたもの。良かったわ」
母とラズが続けて口を開いても、それ以上は誰も何も言わなかった。
「一体何があったというの?亡くなった人がいたと聞いたわ。葬祭をするなら準備の手伝いもしなければいけないし、明日から私たちはどうすればいいのかしら」
祖母は自分の役目は分かっているとでも言うように、他の誰もが聞きたくても聞くことができないことを聞いてくれた。
「何もしなくていいさ。いつも通りに家の仕事をしてくれ。亡くなった者に関しては…名前を出していいかも分からなくてな。いずれ分かることになると思うが、その時に必要な手伝いや気遣いをしてやりなさい」
「わかりました…」
母が返事をしてその夜の質問は終わりにされた。それ以上は祖母でさえ口を開くことはなかった。この家では明日からも変わらない日常を続けることが父の言葉で決定したからである。
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