代償.3

「君だったのか…」

「一つ気になることがあるの。尋ねてもいいかしら」


「僕も君がどうしてこんな場所にいるか聞きたいよ。でも、先に君の話を聞こう」

「あなたは悪いと思ったものを捌くのよね?断罪って、きっとそういう意味でしょう?ということは、悪いと思ったものならば、躊躇なく剣を振るうことができるのよね?」


「躊躇がないわけじゃない」

「そうかしら?神殿の中のあなた、生き生きしてたわ。野生の獣の狩りを見ているようだった」


 そしてそれは神聖で美しくも見えたラズは、悲鳴を発することもできずにただ呆然とその光景を見ることしかできなかったのだが、それは旅人には伝えなかった。


「随分な言われようだ。まあ、否定はしない。鬼神の一族なんでね」

「神殿にいたのは数人の男だけよ。全員顔見知りだけど。悪いのは本当にその人達だけなの?何ヶ月も前から、村の男達はおかしかったわ。もしかしたら、字が読めない私みたいな女以外はみんな真実を知っているかもしれないのよ?だとしたら…あなたはどうするの?此処に偶然いなかった悪人が村にいるとしたら、あなたはどうするつもりなの!?」


 最後は泣きながら怒鳴ってしまった。質問の答えが予測できてしまっていたから。それは当たっていて欲しくはなかったけれど。


「…悪だと見なしたものは、僕は僕の責において、裁かせてもらう。そうせずにいられないんだ。身体中の血が沸き立ちそうになって、自分の体に鬼神の血が流れていることがわかる。身勝手と言われればそうだろう。しかし僕からすれば、君たち人間の方がずっと勝手だ。金なんてもののために、命を愚弄して、明日食べられる飯と、清潔な水があるというのに、それ以上を欲しがる人間たちを野放しにしろというのか!?」


「質問の答えになっていないわっ!…村にいる他の男達は、どうするつもりだったの?私のことは追わないと言ったのは、男じゃないと分かったからよね?こんな小さな繁みに大人の男は潜れないもの。でも、じゃあ、今回の人喰い騒動を知っていながら黙って見過ごしたり、協力していたかもしれない男達はどうなるの!?」


「…僕が悪だと見なせば、裁かせてもらう」

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