代償.4

「私の父や弟もいるかもしれないのよっ!?私此処を動かないわ。あなたが村に行かないように見張っていなくちゃ!」

「…悪いことをしたのに、裁かれない人がいることが正しいのか?」


「あなたの裁きはいつも正しいと言うのっ!?」

「わからないさ。だから僕は言ったはずだ。自らの責で剣を振るうと。生まれた時からそうだった。君が父や母、周りの人たちの言いなりになって当然のように家の仕事をし、やがて父の決めた男と結婚して妻になり母になる。君だって僕と変わらない。僕の場合はそれが使命だっただけだ。逃れることは鬼神の血が許さない。僕の父も、祖父もきっとそうだったんだ。自らの責で、裁いて、人と神の境を彷徨い続ける運命なんだ。ならばせめて僕は忠実でありたいし、誠実でありたいだけだ。逆に尋ねたい。君の村の男達は、金儲けの為に偽の人喰いの噂を流し、都から多くの男を集め、噂がより本当のように見える為に、その男達を見繕って殺していたんだぞ?これは君にとっても正しいことなのか?村の外から来た男たちにも家族がいただろうに。君はそこには何も感じないのか?」


「…感じないわけ、ないでしょう」

「ならば、どうするべきか分かるはずだ。今すぐ此処を出て村へ帰れ。君は何も知らないことにして」


「それじゃあ私は見て見ぬ振りをした悪になるのではないの!?」

「…ならない」


「どうして?」

「…僕は君を悪とみなさない」

「…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る