狩人.2
「ろくな装備もしてなくてさ。そのくせ襟巻きだけは上等なんだよ。姉さんが織る布みたいな上質なやつでさ。でも武器なんか何も持ってないのに「話題の人喰いについて聞きたい」って言いだしたんだって。もうみんな大笑いしたってさ。丸腰で何ができるんだって話だよな。あんな格好で何もできるわけないって、その場にいた全員が言ってたよ。でも一通り話聞いて、今夜討伐に向かうって言ってどっか行ったらしいよ。みんなそれで笑ってるのかもな」
「何がおかしいのよ…」
「えっ?」
「いや、なんでもない。そんな理由だったのね。下品だわ。あの人たちのおかげで生活が豊かになったから、悪く言うんじゃないってお父さんは言うけどね」
「まあ、おかしな話だからね。仕方ないさ。そのおかしな男がどうなったか続きが聞ければいいけどなぁ」
「夜風も入るし、うるさいから閉めちゃうね。窓」
「ああ、わかった。じゃあ、おやすみ。姉さん」
「ええ、おやすみ、ゼリン」
閉めた窓に顔を向けたままで弟にお休みの挨拶をした。ラズの胸は大きな音を立てて鳴っている。どうしたらいい。どうしたい。考えることは愚かなことだと教えられて生きてきた。
でも、こんなにも大事なことを私は考えることも決めることもできない。時間がない。月明かりが閉めた木の板の窓から差し込んでいる。焦る余り湿った掌が、震えながらカーテンを握りしめていた。
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