狩人.1

 家族は夕食を取り終えて、各々の時間を過ごしている。ラズは刺繍を進めながら、心はずっと落ち着かなかった。今朝の男は今頃あの喧騒の中にいるのだろうか。そんなことを考えて、普段は覗くこともない方角の窓を覗いてみる。


「今夜はいつもにも増してうるさいな。姉さん、窓を閉めてしまえよ」

上の弟のゼリンが部屋の入口から呼び掛けた。


「私も気になったの。気のせいじゃないわよね?何で今日はこんなに騒がしいの?」

「さあ?…ああ、そういえば変な男が来たらしいよ。仕事場で噂になっていた」

「変な男?」


 なんだか彼のような気がする。弟のように隊商に勤めるような、村で言うところの真っ当な人間からすれば、彼のような男は異端に見えるだろうことが予想できた。


 だっていつも余計なことを口走ると叱られる自分と話が合ったのだから。そうか、なぜ彼とあんなにも話し易かったのかわかった。彼は一度も私を馬鹿にしなかったし、間違っているとも言わなかった。対等な人間として話をしてくれた人だったのだ。

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