旅人.4
「大丈夫さ。僕は12の頃から旅に出てる。もう10年近い。自分にとって危ないことなら逃げるさ。逃げることも勇気だからね」
「…危ないことはしないでね。知り合ったばかりだけど、家族以外の人とこんなに話したの久しぶりよ。人喰いのことは、多分あなたがうるさくて避けてたっていう辺りに行くといいわ。討伐隊とか冒険者みたいな人たちが大勢いるから。あとは広場の掲示板にも何か貼ってあるわね。私は字が読めないからわからないけど、化物みたいな絵が描かれた紙もあったから、たぶんそう。広場はそこの道を曲がって大きい通りに出たら、そこを沿っていけばあるわ」
「ありがとう。君に幸せがありますように」
「それどういう意味?」
「僕らの種族の挨拶さ。元気でねってことだ」
「そう。じゃあ…気をつけてね。危ないことはしないで……元気でね」
「ああ。ありがとう」
男はラズの目を見て挨拶をして去っていった。
ラズはその後ろ姿を見えなくなるまで見送った。朝食の時間はやや遅れてしまったことも気にならず、むしろ軽口だらけで話ができた見知らぬ男のことばかり考えている自分に気づいたが、お互い名前も名乗らず別れてしまったことを思い出して落胆した。
男に貰った銀色の羽が、彼の手で鮮やかに髪に差し込まれていたのを抜き取り、靴紐に絡めてスカートで隠すようにしてラズは家に帰った。
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